21日のNYダウは158ドル高と反発し、NASDAQは34ポイント高だった。日本も含めたアジアで販売好調で2~4月期決算が5割増益になり株価も9.2%上昇したティファニーの輝きが五番街から差し込んでウォール街を明るくした。プーチン大統領がロシア軍の撤収を確認。ユーロ圏経常収支が改善してヨーロッパ市場は軒並み株高で、4月のFOMC議事要旨公表も株価を冷やす文言は出てこなかった。モメンタム銘柄は買い戻しの勢いがいまひとつ。22日朝方の為替レートはドル円101円台前半、ユーロ円138円台後半で、前日の日中とほぼ同じ水準だった。
しかしながら、前日午後3時30分からの黒田日銀総裁の記者会見は「量的・質的金融緩和は所期の効果を発揮している」「駆け込み需要の反動は企業からは想定の範囲内という声が多い。夏場以降に減衰する見方は変わらない」「円高になっていく理由はない」「トレンドとして株高の方向は変わっていない」など、市場との対話どころか強気発言の言いたい放題で5月のコイの吹き流し。追加緩和期待が取り付く島もない黒田総裁のガラッパチぶりはマーケットで総スカンを食い、直後のドル円は一時101円を割り込み、日経平均先物は一時14000円を割っていた。
そのショックから立ち直り、シカゴCME先物清算値は14185円。日経平均は146.11円高の14188.28円とCME清算値にさや寄せして始まった。取引開始から10時45分まで日経平均は14147~14188円のたった41円の値幅の中で動く。前週にみられた、未明の海外要因で始値が高寄り、安寄りしても日中は薄商いを背景に値動きがごく小さく推移する「夜の帝王、昼間はシエスタ」がこの日も見られるのかと思いきや、日本株を目覚めさせたのが中国発の経済指標だった。
5月のHSBC製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値といえば、思い出されるのは昨年5月23日。ネガティブな数字が発表され後場にかけての大暴落の引き金を引いた出来事で、「あれから一年たちました」。今年は逆にポジティブな数字が出て4月よりも1.6ポイント高い49.7で市場予測の48.3を上回り、5ヵ月連続の50割れながら50まであと0.3ポイントに迫った。マーケットでは物流購入連合会・国家統計局が発表する別のPMIよりも信用されているらしく、中国の景気減速懸念が後退。上海市場はプラスに転じ、経済構造が中国への鉄鉱石、石炭の輸出に大きく依存するオーストラリアの豪ドルレートは急騰し、ドル円レートも101円台後半まで円安に振れた。日経平均も10時45分のPMI発表と同時に一気に14200円台に乗せ、11時台には14250円にタッチし、前場は高値で引けて14267円。値幅は120円に拡大した。
後場は一段高で再開した直後に14300円にタッチ。ロイターが「かんぽ生命が日本株の保有を3000~3500億円規模に拡大」というニュースを流し、円安がさらに進行してユーロ円が139円台に乗せると日経平均の上昇幅は300円を超え、午後1時4分に14300円にタッチする。アジア市場は全面高。しばらく小動きした後、1時54分に14369円まで上昇。いきなり棒上げではなく、休みを入れながら少しずつ刻んで上昇する手堅い値動きには安定感があり、少々のことでは急落しないもの。2時台は少し下げてもすぐ戻す動きを繰り返す。その間も為替の円安が進行した。終盤も14300円台前半で安定し、終値は295.62円高の14337.79円で大幅反発。前日の黒田総裁の強気の会見が為替と株価には「ショック療法」になったかもしれない。日中値幅は222円。TOPIXも+19.29の1169.34で大幅反発。商いが少し活発になり売買高は23億株だったが、売買代金は1兆9851億円で惜しくも2兆円に届かなかった。
値上がり銘柄は1619で全体の89%を占め、値下がり銘柄は140。業種別では31業種がプラスで2業種がマイナス。値上がりセクター上位は証券、保険、パルプ・紙、その他金融、輸送用機器、鉄鋼など。下位は空運、陸運、繊維、水産・農林などだった。値下がりセクターは鉱業と電気・ガスだった。
日経平均採用225種は値上がり209銘柄、値下がり11銘柄。プラス寄与度1~4位には「日経平均寄与度四天王」が揃い合計寄与度は+82円。マイナス寄与度1位は大和ハウス工業<1925>、2位は国際石油開発帝石<1605>で、ともに-1円未満だった。
メガバンクはみずほ<8411>1円高、三菱UFJ<8306>8円高、三井住友FG<8316>66円高と波に乗りきれない。しかし証券セクターは業種別騰落率1位と好調で、売買高4位、売買代金3位の野村HD<8604>は24円高、+3.85%、大和証券G<8601>は30円高、+3.98%でともに大幅高。野村系ベンチャーキャピタルのジャフコ<8595>は290円高で値上がり率3位、日本M&Aセンター<2127>は107円高。ノンバンクは自民党が貸金業の貸出金利の規制緩和に向けて議論を開始したというニュースが入り、アイフル<8515>が後場マイナス圏から急伸して22円高で売買高2位、売買代金6位、値上がり率14位と買われた。