現在、日本国内では40歳以上の男女8人に1人が尿失禁を伴う過活動膀胱(かかつどうぼうこう:OAB)の症状を持ち、その患者数は全国で約810万人と言われている。尿失禁は症状が軽度であっても、日常活動や対人関係に支障を来す等、患者さんの社会生活の障害につながる。OABの治療は薬物療法が一般的ですが、副作用・効果不十分等の理由により、服薬を中止する患者も多く、十分な治療を受けられないこともあるという。
日本光電工業<6849>は先月29日、OAB患者の症状の改善を目的に、主に骨盤底領域の神経の刺激により治療を行う磁気刺激装置 「TMU-1100」を発売したと発表した。
新製品は、成人女性の過活動膀胱患者を対象に、同社の磁気刺激技術やノウハウを駆使して開発した。新しい治療法として、2013年6月に厚生労働省の薬事承認を取得している。椅子型の刺激ユニットの座面下に内蔵した刺激コイル・コアから座面上にパルス磁場(変動磁場)を発生させることで、患者の骨盤底領域に電流(渦電流)を発生させ、主に骨盤底領域の神経を刺激する。
尿失禁治療薬が奏効しない、あるいは副作用・禁忌等により尿失禁治療薬を使用できない患者にとって有効な効果をもたらすという。
着衣のまま、座った姿勢で治療を受けることができる。治療時間は25分で、刺激開始後、刺激強度を5分間で自動的に徐々に上昇。刺激強度は患者に適した強さに任意変更できるため、安心して治療を受けることが可能だ。
また、特殊な電源設備は必要なく、商用電源のAC100Vを使用可能。消費電力は最大刺激時(刺激強度100%)でも440VAと低消費。1m四方のスペースに、本体ユニットおよび刺激ユニットの設置が可能である。
さらに、刺激終了時の刺激時間や強度を各患者のICカードに自動記憶する。ICカードリーダライタにICカードを挿入するだけで、前回の刺激条件を装置に自動設定し、適切な強度で刺激を開始可能である。
本体価格は350万円(税抜価格)で、全国の病院の泌尿器科、産婦人科を中心に販売を見込んでいる。筆者の知人にもこの疾患の患者がいるが、尿意が頻繁に来るため映画館で1本鑑賞するのが大変だという。新治療装置は患者への負担も少なく、新たな治療の選択肢として期待したい。(編集担当:慶尾六郎)