日本政府観光局の発表によると、昨年の訪日外国人数は10,363,904人と初の1000万人越えを達成。前年比でプラス24.0%と大きく増加している。今後この流れを更に加速させたいところだが、隣国である中国や韓国との間には政治的問題がくすぶるっている。そんな中、今最も注目されている地域がイスラム圏だ。
イスラム圏とはその名の通りイスラム教徒の多く住む国や地域のことで、人口は世界の約3分の1。消費市場は300兆円あると見られている。また、イスラム圏に属する多くの国は新興国であり、今後さらなる経済的発展が期待されているのだ。
イスラム圏の人々に対するアプローチにおいて、キーワードとなるのが「ハラル」である。ハラルとは、イスラム法で「合法、清潔、安全」という意味だ。イスラム教徒は神に許された食べ物として原則ハラルフードしか口にすることは出来ない。例えば、アルコールや豚肉などは飲食出来ないし、禁じられていない食材であってもその処理方法が厳密に規定されている。戒律の範囲は調味料や使用する調理器具にまで及ぶ。
ハラルとして認められた食品や、それを提供する企業、店舗にはハラル認証機関から適合証が与えられる。つまり、この適合証を持つ者だけがイスラム圏の人々を相手にフードビジネスを行うことが出来るというわけだ。アメリカなど、他民族国家ではハラル認証を得る企業が増加している。既にイスラムマネーを巡る戦いは始まっているのだ。
国もグローバルな食市場獲得のため、2020年までに農産物・食品の輸出額を1兆円にまで増やす目標を掲げている。農林水産省を中心としてハラルビジネスの後押しに動き出している。ハラル対応型の食肉処理施設の整備にあたっては補助金を出す制度を開始し、ハラル専門家やイスラム圏専門の輸出プロモーターを増員するなどしている。我々自身自覚していることだが、日本ほど食に対するこだわりの強い国も珍しい。ハラルビジネスはそんな日本が他国に対して大きなアドバンテージを持つ分野となるはずだ。イスラム圏の人々は厳しい戒律をとても重んじている。彼らにとってハラルフードに関する日本への信頼が強まることは、他の分野に関しても親密な関係を築くきっかけとなる。日本経済の長期的な発展のためには、新興国の消費エネルギーを取り込むことは必須である。ハラルビジネスへの参入は今後更に増えていくことだろう。(編集担当:久保田雄城)