6月18日の参議院本会議で、改正児童ポルノ禁止法が可決された。子供のわいせつな写真や映像の所持に対し、1年以下の懲役と100万円以下の罰金が科される。また、児童ポルノの製造・流通だけでなく、単純所持も罰則対象となることが盛り込まれた。日本雑誌協会や漫画家、出版社などから「表現の自由を脅かす恐れがある」と異論が起こっていた、マンガ・アニメ・CG(コンピューターグラフィックス)に対する規制は対象外となった。
改正児童ポルノ禁止法は、児童の保護や青少年の健全な育成、児童ポルノが作られる過程での子供への性的虐待や悪影響を減少することが主眼とされている。しかし、まだ法案自体に問題点が多い。
まず挙げられるのは、「児童ポルノ」の定義が曖昧である点だ。条文は3項に分かれ、1項「児童を相手方とする、または児童による性交、または性交類似行為にかかわる児童の姿態」、2項「他人が児童の性器などを触る行為、または児童が他人の性器などを触る行為にかかわる児童の姿態であって性欲を興奮させまたは刺激するもの」、3項「衣服の全部、または一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させまたは刺激するもの」とある。
1、2項は性的虐待や悪影響を考えられるが、3項は判断が難しいだろう。個人の性的嗜好に左右されるものが基準というのは、不明確かつ基準としづらいため、恣意的な逮捕につながる恐れもある。
恣意的な逮捕と書いたが、そうした現象がさらに懸念されるのが「単純所持も罰則対象」となった点だ。例えば、児童ポルノという認識がなく所持してしまっていた場合や、第三者からそうした物や画像を送られてしまった場合、冤罪にもつながりやすい。痴漢冤罪にも似ているが、ネットで送られた画像や郵送などの場合送り主が特定しづらいため、より簡単に他者を陥れることも出来るだろう。猶予期間として、単純所持への罰則は施行から1年間適用されないことになっている。「児童ポルノと思われる物を持っている場合は、1年の間に捨ててくださいよ」ということなのだろうが、前述したようにその定義は非常に曖昧だ。極論だが、自分の娘と友人の娘が水着で遊んでいる写真を持っているだけで、摘発する側が「性欲を興奮させまたは刺激する」と判断すれば逮捕は可能だろう。こうした可能性から、別件逮捕なども考えられる危険な法律と言える。こうした法律は知らない間に可決され、さらに改正や規制強化が行われる恐れもある。気が付いたらマンガ・アニメなどの表現物も規制対象に追加されるかもしれない。そうなれば表現や文化の萎縮だけではなく、それを利用した冤罪や恣意的な逮捕の可能性もさらに増すだろう。どこか児童保護という本来の目的から逸脱している感が否めない法律であり、今後も注視が必要だ。(編集担当:久保田雄城)