サッカー選手が経験する人権問題の打開策とは

2014年06月26日 19:31

 ブラジルでワールドカップが開幕し、サッカーが盛り上がる季節が来た。サッカー王国で多くの名選手がプレーしており、活躍を見せている。しかし、そのスーパースターたちが、日常生活の中で、華やかな活躍の裏で悲しい経験をしていることは知られていない。

 多くのアフリカ系選手が欧州のサッカーリーグでプレーしているが、人種差別的な発言を受けた経験を持っていることが多い。イタリアでは多くのアフリカ系選手が侮蔑的、差別的な野次をスタジアム内外で受けている。イタリア代表のエースFW、バロテッリ選手でさえ、試合相手のチームから様々な人種差別コールを受けている。今回のワールドカップの準備期間でさえ、「ネグロ!クソ野郎!」という罵声が飛んだという。しかも、それはワールドカップに向けたイタリア代表の合宿場での練習時に起きている。

 こうした差別に対して、あるサッカー選手が起こした画期的な対応が注目を浴びた。4月27日、スペインリーグの試合で、FCバルセロナ所属のダニエル・アウベス選手が試合中のコーナーキック時に、バナナを観客席から投げられた。バナナはアフリカ系の選手を猿扱いする意味を持つ。普通ならこうした行為に対して、激怒する、憤慨して試合を放棄する、無視するなどの対応をとるのが普通だが、アウベス選手はそれを食べたのだ。しかも、彼はバナナを投げ込んだ人間が批判を受け、職場を解雇された際、その人間を「解雇しないようにして欲しい」とまで発言した。この行動は評判を呼び、アウベス選手に賛同する各国のサッカー選手たちが、バナナを食べる映像をyou tubeなどの映像メディアに載せた。ブラジル代表のエースであるネイマール選手や日本代表の長友佑都選手も初期段階で立ち上がったうちの1人である。

 サッカーファンにとっては自分が応援している敵チームのプレーヤーに対して何か一言、言いたくなる場合もあるだろう。気持ちが昂ると、度を超えた発言をしてしまうときもあるかもしれない。こうした行為の裏には、嫉妬、移民に職を奪われることへの反発、社会的不満の矛先をアフリカ系住民に向けていること、単なる差別的感情など、その要因は様々である。ともあれアウベス選手の機転の利いた行動を素晴らしい。(編集担当:久保田雄城)