26日のNYダウは21ドル安と反落。一時は100ドルを超える下げだった。NASDAQ総合指数は0.71ポイント下落。新規失業保険申請件数、個人消費支出が市場予測より悪かった上に、セントルイス連銀のブラード総裁のタカ派発言も悪材料視された。量的緩和終了後の来年1~3月期末に「最初の利上げが実施される可能性がある」と述べ早期利上げ懸念が再燃した。それでも債券市場が反応薄で、経済指標で景気回復に疑問符がつけられて長期金利が下落したため終盤には徐々に下げ幅を縮小した。ダークプール(私設取引システム)に関しNY州の司法長官が英国バークレイズ銀行を民事提訴し、シティGが1.2%、JPモルガン・チェースが0.2%それぞれ下落。BNPパリバなど大陸ヨーロッパ系だけでなく、同じアングロサクソンでも容赦はしない模様。27日朝方の為替レートは、ドル円は101円台後半、ユーロ円は138円台前半で円高に振れていた。
月末の金曜日なので取引時間前に国内の経済指標がまとめて発表された。5月の労働力調査は失業率が3.5%で4月比で0.1ポイント改善。横ばいの市場予測よりも良かった。有効求人倍率は1.09倍で4月比で0.01ポイント改善。失業率は16年6ヵ月ぶり、有効求人倍率はバブル末期以来21年11ヵ月ぶりの水準で雇用は好調。全国消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.4%上昇で32年ぶりの伸びで、そのうち消費増税分は1.7%程度とみられる。6月の東京都区部消費者物価指数(CPI)は2.8%上昇。5月の商業販売統計の小売業販売額は前年同月比0.4%減、大型店既存店は1.2%減。家計調査の2人以上世帯消費支出は前年同月比8.0%減だった。
シカゴCME先物清算値は15310円。3月期決算企業約950社が株主総会を開催する集中日の日経平均は22.78円安の15285.71円で始まる。午前9時台に15260円近辺まで下げた後、9時32分には15293円まで上昇し、そこから15250円台まで再び下落。10時18分の15250円で底を打って15270円台まで戻った後はしばらく落ち着いていたが、為替の円高とともに11時頃から15210円台まで下落した。前引は15213円だった。
後場は15157円と下げ幅をひろげて再開し、たちまち15100円を割り込む。ここまで下げた悪材料はアルゼンチンのメッシではなく債務問題のニュース。アメリカ連邦地裁がアルゼンチン政府に2001年の債務不履行(デフォルト)の際の支払い猶予を認めないという判断を示し、再デフォルトの懸念が高まった。リスク回避で円が買われ、日経平均は先物主導で午後1時9分には15027円まで下げて15000円に急接近する。
しかし15000円は心理的な節目で、15007円には前日時点の25日移動平均線があり、その「ダブルサポート」で反転して徐々に値を戻し1時45分頃には15100円台を回復する。どうやら売り仕掛けの理由づけにアルゼンチンが利用され、欧米市場のリスクオフ、高値圏の高所恐怖症的心理、利益確定売りの金曜日、株主総会通過待ちの地合いなどが複合してうまくハメられてしまったらしい。2時台後半にも15100円を割り込むが今度は底堅く、終値は213.49円安の15095.00円で3勝2敗、前週末20日の終値から254.42円下落して今週の取引を終えた。今週は6週間ぶりにマイナス。後場の波乱で日中値幅は266円もあった。TOPIXは-10.28の1253.15で日経平均同様反落。売買高は25億株、売買代金は2兆985億円で久々の大商いになった。
東証1部の値上がり銘柄は377、値下がり銘柄は全体の73%を占める1335。33業種別騰落率の上昇は2業種、下落は31業種。プラスはその他金融、電気・ガス。マイナスで下落幅が小さかったのは輸送用機器、空運、情報・通信、鉄鋼、医薬品など。大きかったのはゴム製品、金属製品、石油・石炭、ガラス・土石、保険、精密機器などだった。
日経平均採用225種は値上がり16銘柄、値下がり204銘柄の全面安。プラス寄与度1位はクレディセゾン<8253>、2位はトヨタ<7203>でともに寄与度は+1円台。マイナス寄与度1位はファーストリテイリング<9983>で-37円、2位はファナック<6954>で-13円だった。
大手銀行が中小企業向け融資枠を積み増し、審査基準を緩和して将来性を重視した貸付を行うと報じられたが、メガバンクはみずほ<8411>2円安、三菱UFJ<8306>4円安、三井住友FG<8316>43円安と軟調。野村HD<8604>は11円安で証券も悪かった。それと対照的に循環物色で元気だったのがノンバンクで、その他金融セクターはプラスで業種別第1位。先行したアイフル<8515>は19円安だったが売買高2位、売買代金1位で相変わらず商いは多い。売買高4位、売買代金16位のオリコ<8585>は17円高で年初来高値を更新し値上がり率5位。アプラスF<8589>は14円高で同2位。クレディセゾンは43円高で日経平均プラス寄与度1位で、アコム<8572>も13円高だった。
トヨタは日経平均が下落した後場に滝のぼりのように逆行高し42円高。そのように指数が下がれば主力株に買いが入る。ホンダ<7267>は11円安、マツダ<7261>は7円安。三菱自動車<7211>はフィアット・クライスラーとの提携関係が9年ぶりに復活し、アジアで販売する小型車を供給すると伝わり前場は高かったが終値4円安。「カネを貸して」と支援を頼んで気まずくなり疎遠になった旧友と、また一緒に仕事をする。優先株の発行で「三菱の親戚」たちから借りた約6000億円は昨年末に全部返している。
NEC<6701>は三井不動産<8801>と組んで「東京ミッドタウン」125台など商業施設内にEV充電器を大量設置と報じられたが2円安。三井不動産は27円安だった。燃料電池車(FCV)も電気自動車(EV)も異業種連携の触媒になりそう。アメリカ子会社が英国のテレビ放送会社CSCメディアを180億円で買収すると報じられたソニー<6758>は24円安で3日続落。シャープ<6753>は3円安、日立<6501>は値動きなし、東芝<6502>は2円高、OKI<6703>は5円高だった。日本オラクル<4716>は2015年5月期単体決算の税引き後利益見通しが過去最高益で2円の増配を見込んでも235円安で値下がり率7位。市場予測に届かないためで地合いが悪いと余計にそうなる。
前日の株主総会は脱原発の株主提案をことごとく否決して通過した電力大手は、東京電力<9501>3円高、関西電力<9503>7円高。通信大手はNTT<9432>13円高、NTTドコモ<9437>2円高、KDDI<9433>12円高と逆行高。ソフトバンク<9984>は中国子会社のアリババがNY証券取引所に上場申請すると決まった。ティッカーシンボルは「BABA」。上場日は中国では縁起が良く北京五輪の開会式の日でもあった8月8日が有力視されている。それを好感されて前場はプラスになったが、後場の先物売りに押し流されて結局46円安だった。
前日に突然人気化した「水素ステーション関連銘柄」の三菱化工機<6331>は59円高で2日連続で年初来高値を更新し値上がり率1位。売買高1位、売買代金3位と買いが盛り上がった。岩谷産業<8088>は売買高8位、売買代金6位だったが利益確定売りに押され、何度もプラスに浮上しながら3円安だった。プラント・設備工事の三機工業<1961>は200万株、17億円上限の自社株買いを発表し52円高で年初来高値を更新し値上がり率4位。鉄建<1815>は27日付の株式新聞で1面トップ記事で扱われたため人気化し18円高で値上がり率6位。小野薬品<4528>はNHKが、厚生労働省がメラノーマ治療薬「オプジーボ」を世界で初めて承認と報じて430円高で値上がり率9位になった。
新興市場は、日経ジャスダック平均は0.97%下落。東証マザーズ指数は3.64%も大きく下がった。ロボットのサイバーダイン<7779>はこの日から信用規制が強化され830円安。ゲーム関連のブロッコリー<2706>は「うた☆プリ・アイランド」のiPhone向け配信を開始し一時ストップ高の219円高と買われ年初来高値更新。クルーズ<2138>は中国のゲーム開発会社ゴス・グループとの業務提携を発表して120円高。東証1部のKlab<3656>はドイツ銀行ロンドン支店に対し権利行使価格1100円で新株予約権の行使を許可し、需給悪化懸念で90円安と売り込まれ値下がり率1位になってしまった。
新規IPOは2件。オンラインの英会話スクールを運営するeラーニング関連銘柄のレアジョブ<6096>が東証マザーズに新規上場。公開価格1170円に対し2691円の買い気配で終え、初値は来週に持ち越し。ネットで医師向け情報サービス「Med Peer」を運営するメドピア<6095>が東証マザーズに新規上場。公開価格4000円に対し2時16分、2.31倍の9250円の初値がついた。その後も10000円にタッチし終値は9400円と順調だった。
この日の主役は「小売業」。3~5月期の業績発表、業績観測から「消費増税後の反動減は心配したほどではない」という声が聞こえてくる。スーパーの平和堂<8276>の3~5月期は生鮮食料品の販売が好調で純利益が過去最高更新の見込みで、通期営業利益見通しを135億円から141億円に上方修正して66円高で年初来高値を更新し値上がり率10位。ドラッグストアのCFSコーポレーション<8229>の3~5月期の単独決算は経常利益5割増の業績観測が出て9円高で年初来高値更新。24日発表の6月の販売額が好調だったニトリHD<9843>も100円高で年初来高値を更新した。大手各社が来週3~5月期の決算発表を控えるコンビニは、商業販売統計によると5月の販売額は全店6.4%増、既存店1.3%増で、小売業の中でも「一人勝ち」の好決算が出てくると見込まれる。(編集担当:寺尾淳)