中小企業は生産性、コスト効率性などに課題も多く、経営体質や財務体質が脆弱なところが多いのでコストアップ要因として無視できない賃上げには慎重にならざるを得ない。「先行きの見通し難」に備えて手元資金を取り崩す余裕はないのが実情だろう。
7月7日、東京商工リサーチは、2014年「中小企業賃上げアンケート」調査結果を発表した。この調査は5月28日~6月10日にかけて、インターネットを利用し中小企業3,319社に対して実施した。このアンケート結果によると、今春、中小企業の回答した64.2%が賃上げを実施したことがわかった。大手企業は円安や景気回復に伴う好業績で99.2%(5月30日経済産業省調査)が賃上げを実施し、本調査で景気回復により中小企業でも賃上げの動きが広がってきていることが判明した。一方、19.3%にあたる企業が「先行きの見通し難」から賃上げを見送り、賃上げを行った企業においても従業員の勤労意欲の維持や人材流出の防止、新たな人材確保が課題として依然残っていることが調査により、明らかになった。
賃上げを見送った中小企業は「先行きの見通し難(54.1%)」や「原資が不足(21.9%)」を主な理由としている。また、「政策効果が出ていない」、「中小企業を取り巻く環境が改善していない」など、アベノミクス効果が、中小企業にまではまだ影響せず、景気の回復遅れを指摘している企業もあった。
中小企業は生産性、コスト効率性などに課題も多く、経営体質や財務体質が脆弱なところが多い。こうした企業においては、コストアップ要因として無視できない賃上げには慎重にならざるを得ない事情もある。アベノミクスにより、一時的な業績回復の兆しが見えても、調査結果で指摘されているように、「先行きの見通し難」に備えて手元資金を取り崩す余裕はないのが企業経営者としての現実ではないだろうか。
中小企業にまで浸透するとしているアベノミクス効果は、こうした企業経営者の懸念材料を払拭することが急務であり、一時しのぎ的な景気回復ではなく、中長期的な視野に立った景気拡大の浸透が必要である。12月に新たな消費税増税の決定がなされるが、景気回復に加えて、中小企業経営者が依然懸念としてあげている「従業員の勤労意欲の維持」や「人材流出の防止」、「新たな人材確保」など、企業活動を継続的に行うための総合的な解決を促す政策の検討が今後必要になってくる。
今後の政策に期待するとともに、日本経済を支えている中小企業経営者の企業運営に期待したい。(編集担当: 久保田雄城)