卵子の凍結保存という選択は現実的か?

2014年07月13日 14:34

画像 卵子の凍結保存という選択は現実的か?

働く女性が増えて晩婚化が進み、40代で初めて子どもを出産するという人も少なくない。将来の妊娠に備えて、卵子を若い間に凍結保存するという選択肢がある。岡山大の調査によると、社会的な理由による卵子の凍結保存に対して、70%以上の人が否定的に捉えていることが分かった。

 働く女性が増えて晩婚化が進み、40代で初めて子どもを出産するという人も少なくない。しかし卵子は30代を過ぎると急速に老化が進み、細胞分裂に異常が起こりやすくなる。不妊治療に挑んだ場合でも、35歳で実際に子どもが産まれるのは2割以下で、40代ではさらに1割を切るとも言われている。卵子は女性が産まれたときから体の中にあるもので、日々新しく作られる精子とは異なる。20歳なら卵子も20年を経ており、30歳なら30年ということになり、加齢とともに進む卵子の老化は避けられない。

 2013年11月に日本生殖医学会が、健康な女性の将来の妊娠のために、若いうちの卵子の凍結保存についてのガイドラインを発表した。それに関連して岡山大は同年の7~9月に、卵子の凍結保存に対する意識調査を実施。成人男女約1, 000人の回答結果によると、社会的な理由による卵子の凍結保存に対しては70%以上の人が否定的に捉えていることが分かった。ただし、子どものいない35歳以上の女性層では肯定感が強い傾向となっている。

 消極的な意見の中には、実際にパートナーが見つからなければ卵子を凍結保存しても意味がないという考えや、いざ解凍して使う段階になったときにうまくいかなければ、ショックが大きいと感じる人もいる。また、高額な費用もかかる上、卵子を取り出す際には排卵誘発剤を使うなどして身体的な負担もかかる。一般的には、卵子を10個取り出すまでに数カ月かかるとされ、そのたびに通院に時間と労力を割かねばならない。
 
 卵子の凍結保存に携わるリプロサポートメディカルリサーチセンターによると、子どもを一人産むために凍結保存する卵子の必要数は、39歳以下で10個、40~44歳以下で50個だという。統計学的には10個保存しても将来出産できない確率は35%にものぼり、診察から採卵、凍結保管までの費用をすべて合わせると70~80万円ほどかかる。さらに卵子の保管費用も必要で、初期費用としての25万円と、卵子1個につき10,800円がかかるため、10個の卵子を凍結保存することになると、1年目の保管費用は35万円以上になる。卵子の凍結保存が高額な費用に見合うかどうかは個人の感じ方によって異なるが、一般的な選択肢のひとつとして利用されるようになるには、まだかなりの道のりがありそうだ。(編集担当:久保田雄城)