1990年、1人の日本人女性が一生の間に生む子どもの数(合計特殊出生率)が過去最低の1.57を記録した。これまでで最も低かった「ひのえうま」の1966年をさらに下回るという、この「1.57ショック」をきっかけに、政府はようやく「少子化対策」への重い腰を上げた。
94年のエンゼルプラン、99年の新エンゼルプラン、04年の子ども・子育て応援プラン、08年の待機児童ゼロ作戦……これらに全く効果がなかったとはいえないが、その後も日本人の合計特殊出生率が目立って上昇することはなかった。05年には過去最低の1.26まで落ち込み、12年には1.4まで回復したものの、今後は「出産適齢期」の男女がどんどん減っていく。
政府が少子化対策を始めてから20年以上経つのに、今ひとつ「結果が出ない」のはなぜだろうか。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」を見ると、結婚している夫婦はこの20年間、一貫して2人以上の子供を産んでいる(それも2010年には1.96人と、調査開始以来はじめて2人を割り込んだが)。とはいえ今でも、2人、3人と産む夫婦は珍しくない。それでも日本人女性の合計特殊出生率が1.4と低迷しているのは、男女ともに結婚しない人が増えたからだ。多くの日本人カップルは結婚してから子どもを産む(だからこそ妊娠が判明してから入籍する「おめでた婚」が存在する)ので、結婚する男女が増えない限り、子どもは増えないだろう。
政府の少子化対策は、「既婚者支援」に偏っていたと言わざるをえない。94年のエンゼルプラン、99年の新・エンゼルプランでも、保育の拡大や、育休を取りやすくする仕組みづくり、子育てしながら働き続けられる環境の整備などが中心だった。07年には男性も含めた「仕事と家庭の調和(ワーク・ライフ・バランス)」が提唱され、イクメンブームも起きたが、いずれも「すでに結婚した夫婦向け」であることに変わりはない。既婚者の両立支援も重要だが、そうしているうちに、結婚しない若者は増え続けている。
2014年版の「少子化対策白書」では、20~59歳の男女に「未婚者に対する結婚支援として重要だと思うもの」を尋ねている。半数近くを占めトップだったのは、「給料を上げて、安定した家計を営めるよう支援する」。次いで「夫婦がともに働き続けられるような職場環境の充実」「雇用対策をして、安定した雇用機会を提供する」が4割台で続いた。上位3つのうち、2つが雇用関連だ。少子化対策は、雇用対策なのである。(編集担当:北条かや)