7月に入り企業が個人を対象に発行する「個人向け社債」の件数が増えている。今月中に近畿日本鉄道<9401>や小田急電鉄<9007>、東芝<6502>など6社が発行を決定した。6社合計の発行総額は1000億円超。すでに昨年7月の月間の記録(4社、570億円)を大きく上回っており、企業の発行意欲は旺盛で投資家の関心も高い。
今回の社債ブームには明確な特徴がある。個人投資家にも親しみやすい「愛称」と、社債購入者向けの「優待制度」だ。近畿日本鉄道は18日に総額300億円の個人投資家向け社債を発行した。3月に開業した超高層複合ビル「あべのハルカス」(大阪市)にちなみ「あべのハルカスボンド」の愛称を付けた。社債の表面利率は年0.39%(期間4年)で、ハルカス内の「大阪マリオット都ホテル」の無料宿泊券などが抽選で当たる。31日に150億円の個人向け社債を発行する小田急電鉄の場合は「小田急箱根あじさいボンド」の愛称を持つ。抽選によるグループのホテル宿泊券や商品券の特典付きだ。
優待制度が人気を集めているのは社債だけにとどまらない。上場企業は「長期株主」づくりを進めている。その施策が株主に対して自社製品などを贈る株主優待制度で、長く保有するほど内容を充実させる例が増えている。マネー雑誌では株主優待の特集が定番となっている。従来は小売りなど消費者に近い企業が多かったが、業種も広がっている。優待目当てで株を買う投資家が増えている。
企業だけではなく、自治体も優待制度を積極的に取り入れ、サービス合戦が激しくなっている。「ふるさと納税」だ。ふるさと納税をする際には、寄付する側が実質的に2000円を自己負担しなければならない。ただ自治体のお礼が負担を埋め合わせたり、上回ったりすることもある。共同通信の調査でも、贈り物がある自治体への寄付は増加傾向が目立った。
社債発行が増加している背景には、低金利を活かして資金コストを下げ財務の改善につなげる企業側の狙いがある。過去の借り入れなどを社債に乗り換え、金利負担が減る利点は大きい。その資金が自社株買いにまわり、株価を押し上げていることも事実だ。気がつくと我々はすでにバブルの領域に足を踏み入れているのかも知れない。(編集担当:久保田雄城)