総務省が公表している平成25年度版の情報通信白書によると、平成24年末のインターネット利用人口は9652万人となっており、日本人の約8割近くが、何らかの形でインターネットを利用していることが分かった。家庭内からの利用目的では「電子メールの受発信」が63.2パーセントと最も多く、次いで「ホームページやブログの閲覧」が62.6パーセントとなっている。また、ICT総研の調査によると、利用者の50パーセント強にあたる4,965万人がFacebookやTwitterなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス、いわゆるSNSを活用しているという。つまり、今や日本人の4割近くの人がSNSを利用し、日々何らかの情報を発信しているのだ。
そんな中、「流行」の生まれ方にも少々異変が起こっている。流行はこれまで、テレビや新聞、雑誌などのマスコミ媒体から発信されて拡がることが多かったが、SNSの爆発的な普及に伴って、この関係性が逆転しつつある。SNSやYoutubeなどで個人が発信した情報をマスコミが収集し、後追いの形で報道されるようなことも珍しくなくなった。
人気ブロガーなどがその影響力を利用し、宣伝目的であることを隠して商品を紹介するステルスマーケティング、いわゆるステマなどの問題も指摘されているものの、SNSに投稿される商品の感想は概ねライブ感のある素直なものが多い。また、基本的には友人知人に向けたものであるため、拡散力も抜群。今やもう、SNS抜きでマーケティングを語る事はナンセンスだ。口コミマーケティングの究極の形といっても過言ではないだろう。
例えば昨年3月、サッポロビールは、計2万4000本の本数限定で「百人のキセキ」というビールを発売し、わずか3日間で完売するという偉業を成し遂げた。この「百人のキセキ」は、消費者の本音の本音を聞き出すために、同社がビール愛好家と商品開発するSNS「百人ビール・ラボ」を開設し、そこで交わされた意見をベースに作られたものだ。同サイトでは通常の意見交換のほか、毎週金曜日にリアルタイムに意見を交わすLIVE会議を実施するなど、消費者がよりアクティブに参加できる試みも取り入れたことで、延べ1万2000人もの人が参加したという。
また、もっと単純に、SNSの口コミ効果で注目度が爆発的に高まり、今年のブームになりそうなものとしては、吉祥地と鎌倉に店舗を構えるアイスクリームショップ「PALETAS」(パレタス)などがある。昨年5月に一号店となる鎌倉店がオープンしたばかりだが、今年4月には吉祥寺店がオープンし、話題沸騰。さらにこの7月には横浜の桜木町に3店舗目が出店と、着実に店舗数を増やしている。
PALETASが販売しているのは、生のフルーツや野菜が入ったアイスキャンディー「フローズンフルーツバー」。値段は一本450円~500円程度と少々お高い設定ながら、高い支持を得ている理由は、可能なかぎり国産材料を使用して合成添加物を使用せず、安全な原材料にこだわっていること。そして、PALETAS独自の新技術を導入することによって、殺菌剤を使用せずに非加熱殺菌を行い、凍らせても新鮮なフルーツの風味や食感を維持していることだ。また、クレープを巻いたアイスバーや、ゴロゴロと大粒のフルーツが見た目にも楽しくポップなアイスバーなど、他店にはないラインナップも大きな魅力。その味と評判がFacebookやTwitterを通して瞬く間に拡散され、あれよあれよという間に行列のできる店となって、テレビ番組にも取り上げられた。
これらの商品や店舗は、SNSマーケティングの代表的な成功例といえよう。しかし、これらは成功例であって、商品力やサービスが伴わなければ、その逆もあることを忘れてはならない。これまでのように、業界やマスコミが意図的に作り上げてきたブームではなく、SNSが流行を創るこの時代は、消費者にとって本当に価値のあるものしか生き残れない時代なのだ。(編集担当:石井絢子)