マレーシアのゴム手袋メーカーの株価が活況を呈している。感染予防としてゴム手袋の需要が急増するとの観測が背景にある。しかし、ゴム手袋の需要増はあくまで副次的なもので、この熱気がどこまで継続するのかは疑問だ。
アフリカ西部で死者が増加しているエボラ出血熱について、世界保健機関(WHO)はついに「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」との認識で一致したと発表した。感染が広がった国には原因不明の発熱などがないか、すべての出国者を検査するよう勧告。感染者が確認されているギニア、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリアの4カ国に対しては、国家元首が緊急事態を宣言し、緊急対応センターの設置を求めた。
ビジネスの世界では既にエボラ出血熱の新薬をめぐり熱い競争が繰り広げられている。米国防総省はエボラ出血熱の新薬の実用化を加速させている。富士フイルムホールディングス<4901>などが開発した新薬候補を巡り、米食品医薬品局(FDA)の優先審査対象とし、臨床試験(治験)から認可までの手続きを迅速に済ませることを検討するとしている。現地で救援活動にあたった米国人らにも感染が広がり、1年以内の早期投入を目指す。手続きが順調に進めば、富士フイルムの薬はFDAが認可する最初のエボラ熱向け新薬の一つになりうるという。同省は開発支援に1億3850万ドル(約140億円)を助成している。
同省は他の新薬候補にも開発費を助成している。リベリアで感染した米国人医師ら2人には、同省が支援した創薬ベンチャー、マップ・バイオファーマシューティカル社(カリフォルニア州)が開発中の未承認薬「ZMapp」が投与された。新薬「TKMエボラ」を開発しているカナダのテクミラ・ファーマシューティカルズ社は、臨床試験を差し止めていたFDAの措置が変更され、患者への部分的な利用が可能になったと発表した。米プロフェクタス・バイオサイエンシズ社(メリーランド州)もエボラ熱ワクチンの開発に取り組む。
一方、世界最大規模を誇るマレーシアのゴム手袋メーカーの株価が活況を呈している。感染予防としてゴム手袋の需要が急増するとの観測が背景にある。マレーシアは世界有数の天然ゴム生産国。感染病が世界的な注目を集めると、医療用の需要が増えるほか、企業が予防手袋の在庫を積み増すため手袋メーカーが潤うとの見方が強まっている。同国のゴム手袋大手3社、トップ・グローブ、コサーン・ラバー、スーパーマックスの株価は、そろって大幅に上昇している。
WHOが2009年4月に鳥インフルエンザの緊急事態を宣言した時にもマレーシアの手袋業界は特需に沸いた。エボラ出血熱は09年の鳥インフルエンザほどの感染規模に達していない。ゴム手袋の熱気がどこまで継続するのかは疑問だ。(編集担当:久保田雄城)