悪材料候補は、25日が「3ヵ月予報で秋は遅くまで残暑が残る予報が出る(衣料などの小売業)」、26日が「ドイツの景況感指数悪化でヨーロッパが株安」「住宅指標でアメリカが株安」、27日が「住宅指標でアメリカが株安」「ミンスク会談が物別れで地政学的リスクが悪化」「ファーストリテイリングの配当権利落ち日」、28日が「7月の販売統計が悪化(自動車、建機)」「JPX日経400の除外銘柄が下落(大引け前)」、29日が「ドイツ失業率悪化でヨーロッパが株安」「GDP改定値悪化でアメリカが株安」「労働力調査で雇用情勢が悪化」「鉱工業生産指数が悪化」「利益確定売りの金曜日」。
少し説明すると、前週末のジャクソンホールでは特にサプライズは出ず無難に通過したので、「ジャクソンホール待ち」で控えていた買いが動き出すと思われ好材料。12日に発表された8月のZEW景気期待指数は7月の27.1から8.6へ大幅に低下しECBの追加緩和策はもはや不可避といわれるほどで、ヨーロッパ経済の牽引車ドイツの景況感、失業率の悪化はまず確実で好材料は出そうにない。そしてアメリカの住宅指標はクセ者。良すぎても「利上げの時期が早まる」とNYダウが下がりかねない。「いいは悪い、悪いはいい」で常識と逆の結果が出るという点では来週9月5日発表の雇用統計も同じジレンマを抱えている。
今週、これらの好材料と悪材料がどんなハーモニーを奏でるのか? 聴いてみないとわからない部分はある。ただし「円安は全てを癒す」ので、為替のドル円が今週もし104円台に定着してくれれば、ここに挙げている悪材料をほとんど打ち消してくれるはず。前回、ドル円が104円を突破して円安が進行したのは昨年12月のことで、日経平均は1138円上昇する「破竹の9連騰」を遂げた。前週で終わった8月11~21日も一応は9連騰だったが、上昇幅は807円で12月の「3割引」という「連騰感なき連騰」だった。もっとも、だからこそ上昇余力はまだ残っている。12月は終値ベースで16291円まで上昇した。
為替がそこまでいかず、ドル円が104円台に時々タッチしながらその少し手前で推移すると仮定すると、好材料と悪材料はほぼイーブンだろう。ウクライナ情勢も、ミンスク会談で両者奥歯に何かはさまったまま結論が先送りになるかもしれない。経済指標も良いものと悪いものが混在すれば方向性の決め手を欠く。だとすれば、道しるべになりそうなのはやはりテクニカルポジション。日経平均の22日終値15539円は、9連騰の後だけにけっこう高い位置にある。
前週に「ミニ・ゴールデンクロス」し5日移動平均線は25日線の上に出て15470円、25日移動平均線は15360円、75日移動平均線は15077円、200日移動平均線は15000円で、全て下にある。日足一目均衡表の「雲」も上限が上昇中とはいえ15225円で300円以上も下に離れている。
とはいえ、現状は「買われすぎ」の状態とも言えない。わずか15円の差だが、22日終値はボリンジャーバンドの25日線+1σ(第1標準偏差)の下にあり、25日移動平均線乖離率は+1.16%、騰落レシオは104.5で、今週も上昇できる余地は十分にあると判断できる。少なくとも、買われすぎが悪材料になって下げ要因に直結するようなテクニカルの数字ではない。
では、今週どこまで上昇できるか? そのメドとして市況解説でよく語られているのが「7月末の戻り高値」である。それは終値ベースでは7月30日の15646円だが、これは22日のザラ場中に15628円まで上昇しあと18円まで接近したので十分突破可能だろう。しかし高値ベースの15759円は、間にボリンジャーバンドの25日線+2σ(第2標準偏差)の15748円が入っていることもあり今週中は難しいと思われる。ドル円が104円台で値固めでもしない限り、今週の日経平均は15700円にタッチしてそこまでが限界とみる。
一方、下値のほうはそれほど大きな下落を喫する要素は見当たらない。信用倍率が4月、5月には5倍とか6倍台だったのが今は4倍台。裁定買い残は昨年5月に4.2兆円、11月に3.9兆円もあったのが今は2.8兆円と、需給面は改善している。だからこそ8日のように防衛線を突破されても2日で修復できるし、前週は海外から仕掛け売りがかかってもおおむね1時間以内に下げ止まった。個人の押し目買い、日銀のETF買い、年金資金の買いなど「下値サポート隊」の力強さについていろいろ語られている。それを考えると、突発的な非常事態でも起きない限り、今週の下値のメドは25日移動平均線の15360円がふさわしいように思える。15225円の「雲」の上限ではちょっと下すぎる。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは15360~15700円とみる。前週と同じように、物色がテーマ株、低位株、新興市場に偏り小幅高または小幅安の日と、東証1部の主力銘柄中心に買われ大幅上昇する日が、交互にやってくるのではないか。毎年秋になると「公共投資で景気を刺激する補正予算案を閣議決定し臨時国会で可決」期待で建設セクターが上昇するが、それを先取りした動きに「秋の気配」が漂うかもしれない。(編集担当:寺尾淳)