厚生労働者が10日に発表した労働経済動向調査で企業の人手不足が明らかになった。正社員が「不足している」という回答から過剰を引いた過不足判断が、6年半ぶりの高水準。特に建設業、運輸・郵便業、医療・福祉業で人材が不足している。
企業の人手不足感が厚生労働者の労働経済動向調査で明らかになった。10日に発表された同調査によると、正社員が「不足している」という回答から過剰を引いた過不足判断が、6年半ぶりの高水準。建設業、運輸・郵便業、医療・福祉業で人材が特に不足し、安倍政権が推し進めてきたアベノミクスの経済効果が現れてきたという見方がある。
事実、高校生の求人倍率も6年ぶりに1倍を超えるなど、景気拡大による売り手市場の傾向が強くなってきた。また、リクルートワークスが7月に発表した調査によると3社に1社が必要な人材を中途採用で確保できておらず、その内52.7%の企業は今後の解消の見通しが立っていないという。必要な人材を確保できなかった業界は小売、医療・福祉、運輸で高い割合となっている。
一方で、構造的な人手不足であるという見方もある。少子高齢化社会の到来と共に日本の労働力人口は減少を続け、2013年の6,577万人から30年には5,683万人になると予想されている。その結果、求職者に人気のある業界や大手企業には人材が集まるが、不人気の業界や中小零細企業には人材が回ってこなくなると言われている。事実、先ほどのリクルートワークスの調査結果では、従業員数5,000人以上の企業では80.3%が必要な人材を確保できたと回答したのに対し、30~299人の従業員数の企業では62.2.%しか必要な人材を確保できていない。
中途採用で今必要な人材を獲得するのに苦戦する企業が多い一方で、それは自業自得であるという向きもある。有効求人倍率は93年から13年まで、団塊の世代の退職による大量採用が行われた06~08年の3年を除き、1倍を割り込んだ。その間、日本経済は失われた20年と呼ばれる長期低迷を続け、就職氷河期と呼ばれる新規学卒者の採用抑制が行われた。コスト削減のもとで人材の育成を怠った企業が、今になって必要な人材を欲しがるのは都合の良い考えであるとも言える。
建築業界は20年の東京オリンピックまで建築需要が続くと見られており、輸送業はオンラインショッピングの発展と共に市場は拡大中だ。また、医療・福祉業界はこれからの成長分野であるため、各業界でまだまだ人材需要は拡大し続けることが予想される。経営資源はヒト・カネ・モノの3つである。人手不足倒産も増える今、ヒトを疎かしにしてきた企業にツケが回ってきているのかもしれない。(編集担当:久保田雄城)