為替は円安でも原油やLNGが安くなったため電力・ガス11社は11月から料金を値下げ。電気の越境販売に関西電力<9503>、中国電力<9504>に続き九州電力<9508>も参入。出光興産<5019>、東京ガス<9531>と組み首都圏に大型石炭火力発電所を建設・供給するという記事が日経新聞1面に載った。しかし九州電力は16円安、出光興産は8円安、東京ガスは7.3円安で終えた。
積水化学工業<4204>は2015年に薄くて折り曲げやすいフィルム型の次世代太陽電池を発売すると報じられたが値動きなし。ウエアラブル端末に適しているが省エネ住宅用「室内建材」として売り込むという。自動車用の合成皮革のシート材やエアバッグ生地、スポーツウェアなどを製造するセーレン<3569>は、東海東京調査センターがレーティングを引き上げ48円高で値上がり率12位。本社は福井市。北陸地方は成長企業を数多く輩出する地域で持ち家率も高く「地方創生」のお手本。「まち・ひと・しごと創生本部」メンバーにはコマツ<6301>の坂根正弘相談役も入っている。
「マルちゃん」の東洋水産<2875>は野村證券が目標株価を引き上げ235円高で年初来高値を更新し値上がり率5位。日清食品HD<2897>は即席めん、カップめんを2015年1月出荷分から値上げすると発表し140円高。アサヒGHD<2502>傘下のニッカウヰスキーの創業者とスコットランド出身のその妻が主人公のNHKの新ドラマ「マッサン」は初回視聴率21.8%で順調な滑り出しだがアサヒGHDは62.5円安。来年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の関連銘柄筆頭はまじめに言えば防長交通の親会社の近鉄<9041>だが、指月電機製作所<6994>、そーせいG<4565>もシャレで買われるか?
小売セクターは業種別騰落率2位と比較的元気。Jフロントリテイリング<3086>は6円高。セブン&アイHD<3382>は、傘下のイトーヨーカ堂が10月から消費税の免税手続ができるようにすると報じられ31円高。ユニーGHD<8270>は消費増税後の消費停滞や天候不順が影響して3~8月中間期と通期の連結業績予想を下方修正し20円安。ローソン<2651>は高級スーパーの「成城石井」を約550億円で投資ファンドから買収すると報じられ90円高。しまむら<8227>は夏の天候不順への対応が遅れ、増益の会社予想に反し3~8月中間期の営業利益が13.1%減。通期の営業利益を当初予想の507億円から457億円に下方修正したが、営業利益見通しが市場予測の430億円程度よりも良かったのでプラスに転じ30円高で終えていた。
女性向け居酒屋のきちり<3082>は一時ストップ高の55円高で年初来高値を更新し値上がり率4位。治験支援のアイロムHD<2372>はストップ高の150円高で値上がり率1位。シノケンG<8909>は12月期の営業利益見通しを33億円から46億円に上方修正し174円高で年初来高値更新。業界全体ではさっぱり売れなくなったはずのマンションの引き渡しが非常に好調という。京成電鉄<9009>は野村證券が目標株価を引き上げ15円高で年初来高値更新。成田空港が国内LCC(格安航空会社)のハブなのも好影響をもたらす。格安ではないANAHD<9202>は売買高11位で2.9円高。空運セクターは業種別騰落率でトップだった。
ゲーム・コンテンツ関連ではコーエーテクモHD<3635>が4~9月中間期の営業利益見通しを22億円から27億円に上方修正し37円高で年初来高値更新。ダウンロード型ゲームも「ゼルダ無双」など「無双シリーズ」も好調。新興市場は日経ジャスダック平均は0.64%下落、東証マザーズ指数は2.20%下落の大幅安で続落。ブロードメディア<4347>がストップ高の80円高と続伸し年初来高値を更新したのが目立った程度だった。
新規IPOは東証マザーズで2件。サイバー・セキュリティ対策製品の研究開発、販売を行うIT企業のFFRI<3692>は初値がつかなかった。3335円の買い気配で終了し公開価格1450円の2.3倍と上々の初日。「築地銀だこ」「銀のあん」「COLD STONE CREAMERY」などを展開する外食のホットランド<3196>は、公開価格2110円に対し9時ジャストに1.7%安い2074円の初値がついた。公開株式数が175万株で、25日に初値が公開価格の約2割安を喫したリボミック<4591>の216万株に近いという不安が的中して黒星。主力銘柄も新興市場も全面安でめぐり合わせも悪かった。それでも終値は2180円で公開価格を上回り、幹事証券など関係者もホッとひと息というところか。
この日の主役はダークヒーローになってしまった住友商事<8053>。3月期通期の当期純利益見通しを2500億円から前期比96%減の100億円に大幅下方修正して166.5円安。下落幅は12.09%に達し値下がり率1位。売買高5位、売買代金3位。アメリカ・テキサス州のタイトオイル(シェールオイル)開発プロジェクトで1700億円の減損損失が発生するのが主な要因で、会社予想が25円だった期末配当も、3円増配して50円だった年間配当も未定に変更。このネガティブサプライズで、25日の中間期配当権利取りで人気を博した総合商社はたたき売られて総崩れ。三井物産<8031>は売買代金8位で39.5円安、三菱商事<8058>は売買代金9位で67.5円安、丸紅<8002>は売買高8位、売買代金11位で28.3円安、伊藤忠商事<8001>は売買代金18位で47円安、双日<2768>は売買高17位の5円安で、卸売セクターは業種別騰落率の最下位に沈んだ。
シェールガス・オイルについては日本の市場関係者には「懐疑派」が多く、中には「全くの夢まぼろし。だまされるな」と盛んに吹聴する強硬派もいる。「それ見たことか」と関連銘柄も一斉に売り浴びせるかと思われたが、代表銘柄の石井鐵工所<6362>は2円安、トーヨーカネツ<6369>は4円安でそれほどの悪影響はなかった。昔から商社が手がける資源ビジネスには当たりはずれがある。その失敗の責任は、この日のように株価急落という形でリスクマネーを出した株主が負う。それが株式投資というもの。警告は大いに結構だが、リスクにチャレンジしてうまくいかなかった企業を、市場関係者のようなリスクマネーの当事者が「それ見たことか」と悪しざまに言うようでは、安倍内閣が成長戦略で実現させたい起業家がどんどん輩出してくる環境など、とても期待できないだろう。(編集担当:寺尾淳)