「今ワシは何党かねと秘書に聞き」―1997年、毎日新聞にこのような川柳が掲載された。97年といえば日本新党、新党さきがけなどが自民党を離党した議員によって作られた後、それらの政党が合流をして新進党や民主党が結党されるいわゆる「新党ブーム」の時代。本当に「何党かね」と聞いていたかはさておき、頻繁に所属政党が変わる国会議員が多かったことは確かだ。今、この新党ブームが再来している。
9月21日、また一つ新たな政党が国会の場に誕生した。大阪市長の橋下徹氏が代表を務める日本維新の会とみんなの党から離党した江田憲司氏が代表を務める結いの党が合流し、「維新の党」が結党された。新党ひとりひとり、次世代の党につづき、国会で今年に入ってから3つ目に作られた政党だ。合流する結いの党がみんなの党から分裂する形で結党されたのは昨年12月。結党から9か月あまりでまた所属する党が代わった議員たちはポスターやホームページの政党名を変えるのに苦労していることだろう。
維新の党は26日の各党へのあいさつ回りで、与党自民党には対決路線を強調し、一方野党第一党の民主党とは臨時国会の国会運営などで共闘していくことを確認するなど、政党が乱立する中でその立ち位置をアピールしようとしている。しかしそんな思いとは裏腹に、維新の党は政策とは違った点で注目を集めている。それは、「いつまた分裂するか」だ。維新の党結党までの報道の中心は党の政策ではなく、名前を決めるまでの激しい対立や組織や人事面での混乱だった。合流した両党の政党支持率はほぼ0%だが、名前をめぐって両党の幹部から「新党結成は破談になる」との声が出る状態では、同党に期待せよという方が無理な話だろう。
前回の新党ブームの際には非自民の細川内閣成立を経て新進党、民主党へと新党が結集していていき最終的には政権交代へと至ったが、今回の新党ブームにはそのような「ゴール」がはっきりと見えない。数合わせ、政局のためと言われても文句が言えないのが現状だ。繰り返される分裂・合流は本当に国民のことを考えているのだろうかというのが多くの国民の正直な気持ちだろう。政界再編の必要性を訴えている議員たちの言葉に嘘はないのかもしれないが、国民に「何党かね」と言われても仕方のない現状では、自民一強の状態は変わらないだろう。(編集担当:久保田雄城)