前週の日経平均は、「3連休明けの日は高くなる」「SQ明けの週は高い」など過去のデータをあざ笑うかのように768円も下落した。週間では4週連続のマイナス。表向きはNYダウの9日からの6日続落に影響された形だが、その底流として、東京市場では需給のバランスが急に悪くなっている。
それが顕著に見られるのが「信用残」のデータ。「2市場信用取引残高(一般信用と制度信用の合計)」の信用買い残は10月10日時点で2兆9546億円で、9月19日の2兆6880億円から9.9%も増加した。その間に信用倍率は3.61倍から5.19倍にはね上がっている。アベノミクス相場では過去、信用買い残には2回のピークがあり、1回目は2013年5月23日の大暴落の約1週間後の5月31日(3兆1719億円/信用倍率6.10倍)で、2回目は2013年12月30日の大納会にピークをつけて年明けからズルズル下落した後の今年1月31日(3兆5241億円/信用倍率6.80倍)だった。そして今回は3回目のピークに向かっているが、1回目の時の終値が13774円、2回目の時の終値が14914円だったことを考えると、信用買い残が減少して需給が改善しない限り、15000円台を回復してさらに上値を追うのは厳しくなりそうだ。
その需給を改善させてくれるのは誰か? 10月第1週(9月29日~10月3日)と第2週(6~10日)の「投資部門別株式売買状況(二市場総売買代金)」を比べてみると、「海外投資家」の売り越しが1948億円から3371億円へ約1.7倍にふくらんでいる。日経平均の4週連続マイナスの最大の「悪役」はやはり海外勢の売りで、それを3542億円から2931億円へと一貫して買い越している個人投資家、433億円の売り越しから420億円の買い越しに転じた投資信託、買い越し額を715億円から1265億円へ増やした信託銀行、売り越しから買い越しに転じた生損保や銀行などのプレイヤーが何とかカバーしているという需給構造になっている。ということは、GPIFや日銀も含めて国内勢にこれ以上の買い支えを期待するのは酷というもので、需給の改善は、やはり海外投資家の「日本株売り」がピークアウトして収束してくれるのを待つ他はない。それが現状の東京市場を取り巻く需給の冷酷な事実である。
東証から需給のデータが発表されるのが1週間後なのがもどかしいが、テクニカル指標では自律反発してもおかしくないはずだった前週に768円も下げたのは、ひとえにこの需給悪化のなせる業だったと言っていいだろう。だが、改善の兆しが見えていないことはない。17日のNYダウは263ドル高で7日ぶりに大幅反発し、トンネルは抜けた。あとは外部環境が改善してリスクオフの大波がどの程度まで引くか。海外勢がどの程度、「東京で売るだけ売ったから、撃ち方やめ」してくれるかにかかっている。「セリング・クライマックス」も、いつかは終わる時が来る。
それを前提に今週もテクニカルデータを確認しておくと、17日終値の14532.51円は終値ベースでは5月23日以来、ザラ場ベースでは5月30日以来の14600円割れ。移動平均線は25日線(15763円)も75日線(15528円)も200日線(15107円)も5日線(14916円)も、みんな上にある。最も近い5日線でも384円も離れていて、まるで潜水艇で深海に潜っているような状況だ。日足一目均衡表の「雲」は15291~15442円で、759円も上昇しないとそれに届かない。ボリンジャーバンドは25日線-2σ(14775円)と-3σ(14281円)の間にあり、日経平均株価がそこに存在する確率は約5%である。
25日移動平均線乖離率はマイナス7.8%、騰落レシオは69.42で10日時点の77.84からさらに低下。ストキャスティクスの9日Fastは5.96。オシレーター指標は10日よりもさらに明確に「売られすぎ」を示している。条件さえ整えば、いつでも自律反発できる。
では今週、需給が大幅ではなくても多少は改善すれば、日経平均の上値はどこまで追えるだろうか。20日の前場にボリンジャーバンドの25日線-2σ(14775円)を超えて14800円ぐらいまではスムーズに上昇できるとしても、その上の関門は3つぐらいある。第1の関門は心理的な節目でもある15000円近辺で、14916円の5日移動平均線が前週後半は上値抵抗線になっていた。第2の関門が15100円近辺で、15107円の200日移動平均線が前週前半は上値抵抗線になっていた。第3の関門が15300円近辺で、ボリンジャーバンドの25日線-1σを超えて「ニュートラル・ゾーン」に入り、10月のSQ値の15296円が待ち構え、下限が15291円の一目均衡表の「雲」にタッチする。しかし前週末から800円近くも上昇しては雲ではね返されやすく、それを抜けて上に出るのは容易ではない。それを超えての株価の本格的な回復にはやはり、需給の本格的な改善を待たねばならないだろう。
ということで今週の日経平均終値の変動レンジは、需給が少しは改善することを前提にして14800~15300円とみる。しかしもし、「イスラム国」のテロが先進国の都市で起きて死者が出たり、欧米各国でエボラ出血熱の二次感染者がゾロゾロ出てきたり、そうでなくても経済指標や企業業績の悪化でNYダウが再びボロボロ下げたり、中国の経済指標の悪化に直撃されたりしたら、前提シナリオは狂う。そうならない保証はない。(編集担当:寺尾淳)