日産NV200、ニューヨーク「イエローキャブ」を独占できなかった鬱憤を日本で晴らす

2014年11月27日 10:05

Nissan Taxi

背の高いワゴンボディ、乗降性が悪いはずはない。日産NV200は、基本「貨物車」だが、NY市タクシーにも認定。スペイン生産のEVもある多彩なクルマだ

 米・ニューヨーク市のタクシーを「イエローキャブ」と呼んでいるが、この正式名称は「NYC TAXI」だ。これはNew York City Taxi and Limousine Commission(TLC/ニューヨーク市タクシー&リムジン委員会)に登録されている車両で、1967年から黄色のボディカラーが義務づけられている。

 NYC TAXI、いわゆる「イエローキャブ」に2011年5月、日産自動車のNV200がNY市の次世代タクシー標準機種に選出され、それまで16車種1万3000台以上もあった市内のタクシーがNV200に入れ替わる予定だった。この契約は2013年から10年間とされており、日産が「イエローキャブ」を独占的に供給されるはずだった。

 しかしながら、地元NY市のタクシー業界はこれに猛反発、市当局を提訴するまでになった。結果を急ぐと、「日産NV200の導入を強制する権限はNY市には無い」と裁判所が判決し、カルロス・ゴーン日産CEOの計画は座礁したといわれる。しかし、NV200の利便性に着目したタクシー会社も少なからず存在し、「日産NV200イエローキャブ」は、確実に増殖している。

 そこで、NY市の不足分を国内で取り戻そうと言うわけではないとは思うが、NV200のタクシー仕様車が日本でも販売される。

 日産のスポークスマン曰く、「ワゴンタイプならではの広々とした室内空間と荷室スペース、スムーズな乗り降りが可能な大きなドア開口部やパノラミックルーフなどの採用により、これまでにない新たな乗車体験を顧客に提供できます。さらに新設計のシートとサスペンションの最適化により、乗り心地の面でもこれまでのセダンタクシー並みの快適性を実現しています」と宣言した。同時に、「高いアイポイントによる視界の良さ、余裕のヘッドスペースに加え、優れた取り回し性能により、長時間運転することの多いタクシードライバーの疲労を低減し、安全な業務を可能とした」という。

 タクシー仕様車としてのコスト面でも怠りなしという。「この面でもNV200は大きなメリットを提供。オートスライドドアやオートステップなどを標準採用ながら、車両価格はこれまでのセダンタクシーと同等レベルに抑え、ガソリンとLPGの両方の燃料が使用でき、経済性と航続距離の向上を実現する“LPGバイフューエルシステム”搭載車も設定した。さらに整備性を向上させることで、維持コストの削減も可能」だとしている。

 さて、その価格だが、ガソリン車で219万6720円、LPG&ガソリンのバイフューエル車が281万6640円。それぞれに乗客へのエンターテインメントとして大きなサンルーフ「パノラミックルーフ」装着車を20万円ほどのエクストラコストで用意する。

 ところで、ここまで書いて思い出したのは、昨年あたりから横浜のお洒落な住宅地などで走っていた「漆黒のNV200タクシー」だ。アサヒタクシー株式会社というところが運用しているらしいが、あれはタクシー専用車ではなかったのか。いや、別途「バイフューエル車」があったような……。

 また、ニューヨーク市では、市長が交代して「イエローキャブは、すべてハイブリッド車に切り替える」とも宣言しているようだ。(編集担当:吉田恒)