法人税の引き下げ競争に、課題山積の韓国も参入?

2014年11月29日 13:35

 日本では、内閣解散・総選挙が決定し、法人税の引き下げ議論も事実上、凍結してしまっている状態だが、お隣の韓国では、19日、セヌリ党の国家競争力強化フォーラムに出席した崔煥副首相が、野党の法人税引き上げ要求を牽制するかのように、「今は引き上げを検討するような段階ではない」と論じ、さらなる波紋を呼んでいる。

 そもそも、韓国の法人税は世界的に見て高いのか、安いのか。課税標準が200億ウォン超で24%(地方税含む)という実効税率は、世界ランキングで24位。とくに高くもなければ低くもない。ただ、同1位の米国(39%)や2位の日本(37%)に比べれば、明らかに低いわけで、いくら野党といえど、そこまで声高に引き下げを要求しなくても、と思うのだが。そこには、福祉予算の財源が不足しているという深刻な台所事情があるようだ。

 崔副首相は、野党の法人税引き上げ要求に対して「世界が法人税を下げる傾向にある中、これを引き上げようというのは、資本の流出問題につながる」とも述べている。自国の法人税の高さに嫌気した企業が法人税の低い国へ拠点を移すという流れは、もはや歯止めが効かない状態だ。

実際のところ、英国の製薬会社アライアンス・ブーツの株式を取得し、スイス(法人税8.5%)への本社移転を進めている医薬品販売会社ウォルグリーンをはじめ、米国の有力企業が次々と、より低い法人税率国のスイスや英国(21%)、アイルランド(12.5%)、オランダ(25%)、カナダ(15%)への本社移転を検討もしくはすでに完了している。

 イタリアのフィアットなど、税法上の住所地を英国にし、3%程度の税負担の軽減を狙った例もある。かつて英国の法人税は30%前後と高く、複数のグローバル企業を失った経緯がある。それが2011年より引き下げに転じ、企業の受け入れ国へと変貌したのだ。

 こうした英国の成功例を見れば、韓国が倣おうとするのも無理はない。ただし、法人税率だけで他国の企業を呼び込めるわけでないのは明確。そもそもその前に、不足する福祉財源の確保という避けられない課題が立ちはだかっているのだ。(編集担当:久保田雄城)