そうなると、日経平均が前日比マイナスで終わる可能性というのは、前場がプラスで終わって後場、日銀砲が休んだスキを先物売りに狙われるか、欧米市場や為替など悪材料が重なって、朝から日銀砲を撃ってもプラスに戻らないほどの大幅下落を喫していた場合に限られそうだ。ところが、今週はそのどちらも可能性が高い「下落覚悟」の週になる。
根拠のその1は鬼門の「SQ週」で、しかも先物も含めた3ヵ月に一度の「メジャーSQ週」だということ。以前から「SQ週の水曜日は下げやすい」と言われていたが、最近はそれに「SQ週の火曜日」も加わって両日は「鬼門中の鬼門」と化している。売られる理由は「SQの前に決済してポジションを解消したい」というSQ日の直前ならではの事情もあれば、「SQ値を低く抑えたい」という思惑がからんだものもある。マイナーSQであれば対象はオプション取引にミニ先物少々だが、メジャーSQになるとそれとはケタ違いの数の建玉が存在する先物取引が加わるから、鬼門も規模が大きくなる。
根拠のその2は、上値追いの原動力「好材料」がネタ切れになること。5日のアメリカの雇用統計は市場予測を上回る良い数字が出て、NYダウは58ドル高で史上最高値を更新し為替のドル円は121円台、ユーロ円は149円台まで円安が進行。CME先物清算値は18045円だった。おそらく8日は「日経平均18000円突破」がお昼のTVニュースでも大きく報道されそうだが、その後に続く好材料が見当たらない。前週は国内では法人企業統計、海外ではアメリカの年末商戦速報、ECB理事会、アメリカ雇用統計など好材料にも悪材料にもなりうる候補があり、総選挙の議席予測報道もポジティブサプライズだったが、今週は国内外ともそれほどインパクトのある材料がなく、「総選挙の結果待ち」に流され小物の悪材料に過剰反応することもありそうだ。もし、8日の7~9月GDP改定値が法人企業統計の設備投資のデータを加えてプラスになったら、本来なら相当な好材料になるが、5日のアメリカ雇用統計とその後の円安のポジティブインパクトにマスクされてしまいそうだ。議席予測報道も、最初に「与党300議席」という派手な数字が出てしまっているので2回目は期待薄。与党10議席程度の上積みでは好材料にはならず、逆に減れば確実に小物の悪材料になる。
根拠のその3はやはりテクニカルポジションの過熱感。5日のデータは前々週末と比べて改善したように見えて、実はあまり改善していない。25日移動平均線は1週間で484円も上昇して17203円で、5日終値のそれとの乖離率は4.4%から4.1%に低下しているが、25日騰落レシオは前週3日にわたって140をオーバーし、5日も135.06で120を大きく超え依然過熱ゾーン。ボリンジャーバンドも前々週末は25日線-1σと+1σの間の「ニュートラル・ゾーン」に位置していたが、5日は+1σのラインを超えていた。
さらに気になるのは日足一目均衡表の「雲」が今週初めにねじれること。ねじれた後は今週末まで下限は15828円、上限は15946~16004円に位置する。「雲のねじれは変化日」と言われているが、6日続伸した後に「変化」すると言うなら、それは下落以外にはない。
25日移動平均乖離率は5%をオーバーすれば過熱だと言われる。5日時点で「25日線+5%」のラインは18063円で、8日にそれにタッチする可能性は大きい。しかし「鬼門のメジャーSQ週」「上値追いできる好材料に乏しい」「テクニカルの過熱感」といった下落覚悟の諸要素を勘案すると、18063円が今週の上値追いの限界になるとみる。一方、鬼門のSQ週ゆえに小物の悪材料に過剰反応する悪いクセも出そうで、日銀砲を撃ってもムダに終わる大幅下落の日もあると想定。特にSQ週の火曜日の9日とSQ週の水曜日の10日は鬼門中の鬼門の「危険日」で要警戒だ。ペシミスティックにその下値は17203円の25日移動平均線とみる。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは17200~18000円とみる。下落の恐怖感たっぷりだが、頼みの「日銀砲」は年間のETF買い入れ総額つまり撃てるタマの数に上限があり、1回374億円のペースではあと4回程度しか残っていない。そろそろ〃タマ切れ〃が心配になる。日銀がとるのは「ETFの買い入れ金額を減らす」というタマの節約か? それとも「前場に少々下げたぐらいではETF買い入れをしない」という撃ち込む回数の節約か? 今週はそれも気になる。(編集担当:寺尾淳)