【日経平均】瞬間NYダウを抜いても後場尻すぼみ57円高

2014年12月03日 20:32

 2日のNYダウは102ドル高で終値ベースの史上最高値更新。NASDAQも28ポイント上昇した。ECB理事会を前に追加金融緩和期待でヨーロッパ株が高くなり、10月の建設支出が市場予測を上回り、11月の新車販売台数もGM、フォードが市場予測を上回った。GMは1.0%、フォードは0.8%それぞれ上昇。さらに大型M&Aの話がマーケットを刺激する。大塚HD<4578>傘下の大塚製薬による買収に合意したアバニア・ファーマシューティカルズは12.8%の大幅上昇。合併を発表した精密機器のサイプレス・セミコンダクターは14.3%、スパンションは21.9%それぞれ上昇。ロイヤル・ダッチ・シェルがBPの買収に関心という石油業界スーパーメジャー同士の超ド級の噂まで飛び出しBPは4.7%上昇した。3日朝方の為替レートはドル円が119円台前半、ユーロ円が147円台後半で、円安がさらに進行した。

 前日は、前引けが約3円の小幅安でも「日銀砲」は後場、11月から6億円パワーダウンしただけの374億円が撃ち込まれ株価指数は年初来高値を更新した。「前場マイナスなら撃つ」から、前場は中途半端なプラスより意図的にプラス浮上を阻んで日銀砲発射を誘う「寸止め作戦」をとるほうが終値は高くなるのかもしれない。原油先物価格の反落と円安を背景にCME先物清算値は17780円。日経平均はそれに近い108.93円高の17772.15円で開始しTOPIXもプラスで始まる。序盤は安定しながら17000円台後半で推移。オーストラリアの7~9月期のGDPは前期に比べ0.3%、前年同期比で2.7%増加でも市場予測は下回ったが、お構いなく午前9時40分頃から先物主導で上昇開始。17800円をあっさり突破し9時台のうちに17850円を超え、10時4分に17881円の高値をつけて2007年7月25日以来の水準に。NYダウ終値を為替レートを無視した絶対値で上回って「NN倍率」が1を超えたのは昨年5月22日以来。しかし10時台は上海も香港もプラスでスタートするが17800円に向かって徐々に下げていく。11時台に少しだけ上昇して前引けは17845円だった。

 後場は少し安く再開し17800円を一時割り込むが、すぐ戻して底堅い。だがそれも午後0時台限りで、1時を回ると17800円を大きく割り込む。小惑星探査機「はやぶさ2」が種子島宇宙センターから無事打ち上げられ、宇宙への52億キロの長い旅に出た。ほぼ同時に日経平均も1時20分の17731円で底を打って反発上昇するが、推進力はH2Aロケットに遠く及ばず17800円まで戻れずにヘタれる。1時台はまだ17000円台後半で踏ん張っていたが、為替のドル円が119円台を維持しながらも円高方向に戻したので2時台は大きく下げ、17000円も一時割り込み2時11分に17696円まで下落。「日銀砲が撃たれない昼下がり」はこうも弱くなってしまうのか? 少し戻しても終盤には再び軟化し、終値は57.21円高の17720.43円。4日続伸し年初来高値を更新しても、NYダウを絶対値で抜いて華々しかった前場とは対照的な尻すぼみの後場でローソク足は陰線(黒)になった。日中値幅は185円。TOPIXも+1.90の1429.75で年初来高値更新。売買高は25億株、売買代金は2兆6886億円だった。

 株価指数はプラスでも、値上がり銘柄822より値下がり銘柄884のほうが多い。それでも上昇業種は23で下落業種は10にとどまった。プラスセクター上位は鉄鋼、証券、繊維、精密機器、空運、非鉄金属など。マイナスセクター下位はパルプ・紙、陸運、保険、医薬品、情報・通信、卸売などだった。

 日経平均採用225種は値上がり111銘柄、値下がり103銘柄。プラス寄与度1位は取引開始から終了まで日経平均の値動きを左右したファーストリテイリング<9983>で+21円。2位はエーザイ<4523>で+8円。マイナス寄与度1位はKDDI<9433>で-7円、2位はNTTデータ<9613>で-3円だった。

 1日に日本国債を突然格下げしたムーディーズは、その日本法人が前日、三菱東京UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三井住友銀行、静岡銀行、中国銀行の5行の格付けを1段階引き下げた。株価は三菱UFJ<8306>が1.2円高、三井住友FG<8316>が3円安、静岡銀行<8355>が6円安、中国銀行<8382>が15円高。格下げを免れたみずほ<8411>は0.5円高。3大メガバンクは日系企業を誘致しているミャンマーの経済特区の開発会社に出資するニュースもあった。大分銀行<8392>はユーロ米ドル建て新株予約権付社債発行による1億ドルの調達と、650万株、30億円上限の自社株買いを発表して3円安。永井浩二CEOが投資家向けセミナーで、長期経営ビジョンの最終年2020年までに顧客資産残高を150兆円に増やすという経営目標を発表した野村HD<8604>は11.3円高、日本アジア投資<8518>は9円高で値上がり率5位に入り、証券セクターは業種別騰落率第2位になった。

 1~3月の自動車国内生産計画を約2万台分減らすトヨタ<7203>は65円高で年初来高値更新。アメリカで原油安によって燃費の良いエコカーの売れ行きが鈍り、「プリウス」などHV車の輸出向けを減産するため。「ガソリンが安くなったからエコカーなんかいらない」なんて、そんなことでいいのかアメリカ人。中国の新車販売がマイナスだったホンダ<7267>は24円高、同じく日産<7201>は6.5円安、富士重工<7270>は1円高で年初来高値更新。日本時間で4日午前0時からアメリカ連邦議会下院で公聴会が開かれると決まったタカタ<7312>は40円高。再び、まな板の上のコイになる。

 ソニー<6758>は、伊藤忠商事<8001>が開発・参入する家庭用蓄電システムにリチウムイオン電池が採用されると報じられたが27.5円安。伊藤忠商事は5.5円安。家庭の1日の消費電力の約6割をまかない、停電時の非常用だけでなく夜間に蓄電して電気代を節約する「スマートハウス」でも活用できるという。その材料のリチウムは大部分をチリから輸入している。豊田通商<8015>がアルゼンチンから輸入して調達先の分散を図ると報じられたが12円安だった。東芝<6502>は3.5円安、日立<6501>は5.8円安、シャープ<6753>は2円安と電機大手が軒並み安の中、パナソニック<6752>は17.5円高でひとり年初来高値を更新していた。

 アルプス電気<6770>はUBSがレーティングを引き上げたが19円安。三井ハイテック<6966>は1月期通期の営業利益見通しを26億円から29億円に、純利益見通しを20億円から25億円に上方修正。年間配当予想も15円から17円に増額修正し111円高で年初来高値を更新し値上がり率1位。円安が追い風でスマホ向けリードフレームも車載機器向け電子部品も好調という。環境機器や住宅機器を手がける東証2部のダイキアクシス<4245>は19日付の東証1部への指定替えを承認されたと発表し75円高で年初来高値更新。東証1部指定の記念配当と記念株主優待も実施し、期末配当予想を11円から14円に増額修正し、12月31日時点の株主を対象に1000円相当のQUOカードを進呈する。

 KDDIの連結子会社でCATVのジュピターテレコム(JCOM)が2月からマンション向け一括受電事業で節電量に応じて利用者にポイントを付与するサービスを始めると報じられたがKDDIは90円安。千代田化工建設<6366>はアメリカ・アラスカ州の大型天然ガスプラントの初期設計を受注し9円高。鉄鋼セクターは業種別騰落率トップ。JX日鉱日石エネルギーとオーストラリアで石炭の新鉱区を開発するという材料があった新日鐵住金<5401>は売買高3位、売買代金16位で10.9円高。JXHD<5020>は1.6円安。神戸製鋼<5406>は売買高6位、7円高で年初来高値更新、JFEHD<5411>は36円高で年初来高値更新。日新製鋼<5413>は配当性向を3年で30%に引き上げると発表し77円高で値上がり率6位だった。

 中越パルプ工業<3877>は王子HD<3861>と資本・業務提携を締結して王子HDの持分法適用会社になると報じられ4円高。王子HDは3円安、北越紀州製紙<3865>は26円安で値下がり率7位になりパルプ・紙セクターは業種別騰落率最下位だった。15日連騰していた日本化学工業<4092>についに年貢の納め時が来て36円安で値下がり率1位。売買高は13位。