【日経平均】今週の半値戻しに迫り114円高でまぼろしのSQ

2014年12月12日 20:17

 11日のNYダウは63ドル高で4日ぶり反発。一時は225ドル高まで伸ばしたが終盤急落し終値では17600ドル台も回復できなかった。NASDAQ総合指数は24ポイント上昇。11月の小売売上高は0.7%増で3月以来の大きな伸び。新規失業保険申請件数も市場予測を超える改善で個人消費期待の買い戻しが活発に。しかし原油先物価格が1バレル59.95ドルと5年5ヵ月ぶりに60ドルを割り込むと終盤の指数を下げた。34丁目のメーシーズ1.5%上昇など小売株が揃って堅調な中、注目された業態が文具(事務用品)販売。ステープルズは8.7%上昇、昨年オフィスマックスを合併したオフィス・デポは12.1%上昇。ヘッジファンドが保有比率を高めようと動いているため。12日朝方の為替レートはドル円が119円近辺、ユーロ円が147円台半ばで前日よりも円安方向に戻していた。

 CME先物清算値は17300円。前日は前場一時500円安を超える大幅安だったが、日銀はETFを買い入れず「日銀砲」を撃たなかった。前週は前引けプラスでも撃った日があったので、マーケットでは「タマが切れたのでは?」など憶測を呼んでいた。しかし気にすること自体〃依存症〃の兆候。メンタルケアはお早めに。共同、朝日、日経など報道各社の総選挙の議席予測は「自民300議席、与党3分の2の317議席」の数字が並んだ。

 3ヵ月に1度、先物もオプションも全て特別清算指数(SQ値)を算出し決済する「メジャーSQ」の日の日経平均は60.29円高の17317.69円と反発で始まる。TOPIXはなぜかマイナス。開始直後に日経平均は17298円と17300円を割るが一瞬だけで、順調に値を伸ばす。TOPIXもプラスに転じる。午前9時3分に早々とSQ値がやや低めの17281.64円と出た。11月のSQ日と正反対に、ザラ場中に一度もそれを下回らない「まぼろしのSQ」になる可能性が出る。9時21分に17395円まで上昇しTOPIXは1400台を回復したがそこで頭を抑えられ、17400円を超えられない。前日17384円の25日移動平均線がレジスタンス活動をしている模様でジリジリ17350円近くまで下げるが、10時を回ると唐突に上昇し10時10分に17400円タッチ。その後は17400円に接した値動きが続いた。

 中国政府は2015年の経済運営の方針を決める「中央経済工作会議」を終え、「高速成長から中高速成長の『新常態』への転換」を宣言。2014年まで「7.5%前後」だった経済成長率の目標を3年ぶりに引き下げる方針で、3月の全国人民代表大会(全人代)で公表する新しい経済成長率目標は「7%前後」が軸になる見通しと伝えられた。それを好感したのか10時30分開始の上海総合指数も香港ハンセン指数もプラスで始まる。日経平均も再び上昇し17400円も17450円も突破。10時59分には17497円と17500円に迫った。しかしこの日はなぜかキリのいい数字の手前で抵抗を受け、11時台は17460円付近まで下落する。前引けは17474円だった。

 後場は前場とほぼ同水準で再開するが、午後0時53分に17500円を突破し17526円の高値をつける。しかし1時台は再び17400円台に後退。1時30分に10月の鉱工業生産指数の確報値が発表され、速報値の0.2%増から0.4%増に上方修正された。朝にSQ値が算出されて決着がつけば後場は17400円台前半で安定的に推移。2時台は上昇して17500円をうかがう位置につけたが、ここで水をかけたのが2時30分にまとめて発表された中国の経済指標。11月の小売売上高は市場予測より0.2ポイント良い11.7%増、1~11月の都市部固定資産投資は15.8%増、不動産開発投資は11.9%増だったが、11月の鉱工業生産指数が10月の7.7%増、市場予測の7.5%増より低い7.2%増にとどまり、この景気減速感で上海市場も香港市場も一時マイナスになり乱高下した。その混乱が東京市場に波及し、利益確定売りの金曜日でもあり終盤の日経平均は17400円も17384円の25日移動平均も割り込んだ。終値は114.18円高の17371.58円で4日ぶりに反発し、2勝3敗、前週末5日終値から548.87円下落して今週の取引を終えた。

 衆議院が解散した11月21日の終値17357円を上回り「総選挙アノマリー」は今回も健在。しかし新聞の予想が「与党圧勝」でも結果を見きわめたいムードは残り、解散日から14円高いだけだった。メジャーSQ日で日経平均はSQ値を一度も下回らず「まぼろしのSQ」出現。SQ値17281円は今後、下値のサポートラインになってくれるはず。今週は8日最高値18030円から11日最安値17043円まで上下987円も変動したが、12日の高値では「半値戻し」17537円にあと11円まで迫っていた。日中値幅は228円。TOPIXは+2.61の1399.65で4日ぶりに反発しても1400の大台を回復できず。売買高は31億株、売買代金は3兆6314億円で、メジャーSQの日にしては少ない部類に入る。

 東証1部の値上がり銘柄数786より値下がり銘柄数934のほうが多く、全体の50%を占めた。33業種別騰落率も上昇16業種、下落17業種とほぼ拮抗。プラスセクターの上位は電気・ガス、建設、精密機器、電気機器、サービス、保険など。マイナスセクターの下位はパルプ・紙、その他金融、石油・石炭、卸売、その他製造、水産・農林などだった。

 日経平均採用225種は値上がり121銘柄、値下がり96銘柄。プラス寄与度1位はファーストリテイリング<9983>で+34円、2位はキヤノン<7751>で+8円。マイナス寄与度1位はホンダ<7267>で-3円、2位は中外製薬<4519>で-2円だった。

 メガバンクはみずほ<8411>が0.5円高、三菱UFJ<8306>が0.9円高、三井住友FG<8316>が22円高と反発。野村HD<8604>は4.3円安だった。19円高のトヨタ<7203>は国内で18万5093台のリコールを実施済みだが、前日までにホンダ、日産<7201>、三菱自動車<7211>が合計26万107台のリコールを国土交通省に届け出て、タカタ<7312>のエアバック関連の国内リコール台数は合計300万台を超えた。ホンダは48円安、日産は12円安、三菱自動車は22円安、タカタは10円高。タカタ以外の部品メーカーが肩代わりの交換用部品の緊急増産に乗り出し、ホンダの要請でダイセル<4202>は2015年に数十億円を投資し、ガスを発生させる部品「インフレーター」のラインを新設すると報じられ64円高で年初来高値を更新した。富士重工<7270>は65.5円高、マツダ<7261>は82.5円高だった。

 電気機器セクターは業種別騰落率第4位。ソニー<6758>はアメリカの投資ファンドWiLと組み、ネットワーク技術を生かして住宅設備を制御する「スマートホーム」事業に参入し、スマホでドアキーを操作できるシステムを5月に発売すると報じられたが23.5円安。お得意のセンサーや画像処理の技術の住宅セキュリティへの活用も検討する。将来を「住宅と自動車」に託すパナソニック<6752>は10円高、シャープ<6753>は1円安、東芝<6502>は5.7円高、日立<6501>は2.2円安、NEC<6701>は4円高、富士通<6702>は1.5円高だった。

 日本電産<6594>はドイツの自動車部品メーカーGPMを買収と発表し357円高。買収額約400億円。冷却水や潤滑油を供給する自動車用ポンプでGPMはヨーロッパ第2位のシェアがある。もう1社、SRモータードライブを製造する中国のチャイナテックスの買収も発表した。買収先の目利きの名人、永守重信社長が言っていた「M&A再開」の第1号はこの2社。半導体関連のジャパンマテリアル<6055>はシンガポールのアルドン・テクノロジーサービスの株を51%取得し子会社化すると報じられ110円高で値上がり率9位。精密プラスチック加工のエンプラス<6961>は、100万株、45億円上限の自社株買いを発表して25円高だった。

 JUKI<6440>は水戸証券がレーティングを引き上げ25円高で年初来高値を更新し値上がり率12位。産業装置などノンアパレル分野の高収益性が評価された。環境機器メーカーの月島機械<6332>はドイツの工業用ろ過機メーカー、ボケラを30億円で買収し子会社化すると報じられ10円安。初めての海外企業の買収という。

 KDDI<9433>は、子会社のKDDIバリューイネイブラーの「UQモバイル」ブランドで18日から格安スマホに参入と発表。「au」の回線を貸し出し、機器、通話料、高速データ通信込みで月額2920円から。端末は京セラ<6971>製と韓国のLG製の2種類。しかし収益源「au」の顧客が流出する懸念で26円安だった。京セラは54円高。NTTドコモ<9437>は25.5円安だった。関西電力<9503>は、高浜原発3、4号機が原子力規制委員会から安全審査合格の内定を年内に得られる見通しになったと報じられ45円高で年初来高値更新。再稼働審査合格は九州電力<9508>川内原発に続き2例目。手続きだけで言えば再稼働は春以降に可能になる。九州電力は54円高、東京電力<9501>は売買高4位、売買代金14位と買われ18円高で、電気・ガスセクターは業種別騰落率トップ。

 議席予測で与党優位は揺るがず、選挙後の補正予算の成立・執行に期待して建設セクターは業種別騰落率第2位。代表銘柄の大成建設<1801>はドイツ証券が目標株価を引き上げて22円高で年初来高値を更新していた。前日、石油連盟の木村康会長は記者会見で原油価格は「年末に向けて現状からやや持ち直す」「中長期的には必ず上がる」と述べた。しかし木村会長がJX日鉱日石エネルギーの会長を務めるJXHD<5020>は4.2円安、昭和シェル石油<5002>は1円安、出光興産<5019>は18円安で年初来安値を更新し、石油・石炭セクターは業種別騰落率第31位と不振だった。