【日経平均】人民元急落には後場の日銀砲も空しく122円安

2014年12月09日 20:14

 週明け8日のNYダウは106ドル安と大幅反落。NASDAQは40ポイント下落。日本の7~9月期GDPの下方修正、輸入がマイナスに転じた中国の貿易統計、市場予測を下回ったドイツの鉱工業生産指数など、世界の景気に不安を抱かせる経済指標が次々と出てきたため。一方で雇用統計の数値が良すぎてFRBの早期利上げ懸念も浮上した。「マージャー・マンデー」はメルクがキュービストの買収を発表しメルクは0.6%上昇、キュービストは35.3%の急騰。原油先物の下落が止まらずエクソンモービルは2.3%、シェブロンは3.7%下落。世界既存店売上高が市場予測を下回ったマクドナルドは3.8%安だった。9日朝方の為替レートはドル円120円台後半、ユーロ円148円台後半で、円高が進行。

 CME先物清算値は17745円に後退。前日は前引けがわずかなプラスでも後場に「日銀砲」が374億円も撃たれた。今年分の買い入れ枠が残り少ないのに乱射するのはいかがなものか。それが正義であろうと大砲に頼って生きる者は大砲によって滅ぶ、とはなりたくない日経平均は115.40円安の17820.24円で始まる。TOPIXもマイナスでスタート。しかし、NYの株安、円高進行にもかかわらず、下げても午前9時4分の17801円どまりで17800円を割り込まない。日銀砲をプラスでも撃ったことで、保有するだけで抑止力になる「最終兵器」の効果が出ているらしい。GPIFという官製別働隊もいる。ドル円は一時121円にタッチし、日経平均は9時台のうちに17870円近辺まで上昇。10時台も17870円を軸に上下およそ20円幅で小動きした。

 香港市場はマイナスだが上海市場はプラスで始まる。上海総合指数は前日まで5日続伸し3年7ヵ月ぶりの高値圏。11月21日の中国人民銀行の利下げ以後、本土市場は異様な過熱感に支配されていて、その「バベルの塔」の大崩壊の影響が日本に及ぶのが怖い。日経平均は順調に下げ幅を圧縮して11時4分に17892円まで上昇した。11時台は徐々に下げたが、前引けは17877円。57円安で後場に日銀砲を撃つにはちょうど良い湯加減。

 後場はほぼ前引け水準で再開するが、為替のドル円が午後0時40分頃からいきなり円高方向に急進。日経平均も下げ足を早めて0時52分には17800円を割り込む。その主な原因は人民元の対ドル0.5%の急落で「バベルの塔」はいきなりひび割れた。リスク回避のまとまった円買いが入りドル円は120円そこそこまで、ユーロ円は147円台後半まで円高が進行し、日経平均は1時17分に17777円まで下げる。鬼門のSQ週の鬼門の火曜日は過熱した中国のリスクに直撃された。1時48分には17773円をつけて安値更新。2時台に17830円台まで上昇するが、再び押し下げられて17800円割れし、利益確定売りが一気に噴き出したかのよう。だが、負け戦でも日銀は律儀に374億円の日銀砲を放ち、「三方ヶ原の合戦」の徳川家康のようにマーケットに忠義を示す。終盤は17800円台に戻れそうで戻れない時間帯が続くが大引けでやっと乗せ、終値は122.26円安の17813.38円で8日ぶりの反落。3ケタ安はTOPIXのリバランスが凶と出て大引けで下げた11月27日以来8営業日ぶり。日中値幅は119円。TOPIXも-11.49の1436.09で8日ぶり反落。売買高は21億株、売買代金は2兆3740億円だった。

 値上がり銘柄は380、値下がり銘柄は1378で全体の74%を占めた。値上がりは4業種で値下がりは29業種。プラスセクターは食料品、電気・ガス、銀行、陸運。マイナスセクターで下落幅が小さいのは医薬品、空運など、下落幅が大きいのは証券、鉱業、精密機器、ガラス・土石、電気機器、機械など。

 日経平均採用225種は値上がり銘柄60、値下がり銘柄159。プラス寄与度1位はKDDI<9433>で+12円、2位はファーストリテイリング<9983>で+10円。マイナス寄与度1位はソフトバンク<9984>で-24円も足を引っ張り、2位は東京エレクトロン<8035>で11円だった。

 メガバンクはみずほ<8411>が2.9円高、三菱UFJ<8306>が3円高、三井住友FG<8316>が18円安で全体が軟調な中で健闘し、銀行はプラスのセクターに入り業種別騰落率第3位だった。対照的に証券セクターは業種別騰落率最下位。日本アジア投資<8518>は7円安で値下がり率2位、光世証券<8617>は17円安で値下がり率6位、マネーパートナーズG<8732>は32円安で値下がり率11位に入り、野村HD<8604>は22.7円安で3%を超える下落ぶりだった。

 トヨタ<7203>は東北大学との共同研究で、リチウムイオン電池よりも安全な次世代電池「全固体電池」の充電時間を従来の10分の1に短縮したと報じられたが102円安。ホンダ<7267>の伊東孝紳社長は日経新聞のインタビューで、タカタ<7312>の問題について原因究明を待たず調査リコールを全世界に拡大すると明らかにし、リコール台数は540万台になる見込み。「どこも支援しないならタカタを支援する」とも述べた。両社は本田宗一郎氏がホンダの社長だった時以来、半世紀以上の長い付き合いで、ホンダはタカタの大株主。ホンダは13.5円安、タカタは4円高だった。二輪車を中心にホンダ向け6割のクラッチメーカーのエフシーシー<7296>はみずほ証券が目標株価を引き上げ62円高。富士重工<7270>は117.5円安、マツダ<7261>は98.5円安、日産<7201>は3円安だった。

 ソニー<6758>が104円安になった材料は11月下旬に始まった無慈悲な「サイバー攻撃」。ソニー・ピクチャーズに続き「プレイステーション」のオンラインショップも攻撃を受けた。北朝鮮の金正恩第一書記の暗殺計画を描いた新作コメディ映画『ザ・インタビュー』が原因という見方が有力で映画の公開中止を要求。北朝鮮政府は関与を否定したが朝鮮中央通信は「正しい行為」と伝えた。日立<6501>は前日、歩きながら手をかざすだけで、人によって異なる静脈の形状を読み取り高精度で本人確認ができる技術を開発したと発表したが20.3円安。スポーツイベントなど大勢の人が集まる場所での無慈悲なテロを未然に防ぐセキュリティシステム。東芝<6502>は9.5円安、NEC<6701>は3円安、シャープ<6753>は2円安、パナソニック<6752>は49.5円安だった。

 住友電工<5802>は、太陽を追尾する独自の太陽光発電システムを今年度中にサウジアラビアとモロッコに設置するという報道があり5.5円高。日立造船<7004>は中国で高性能の汚水処理機を展開すると報じられ11円高。「水のクリタ」の栗田工業<6370>は、不純物ゼロの「超純水」を韓国のハイニックスから受注してその半導体工場に供給するという話題があり、38円高で年初来高値を更新し4日続伸した。

 後場に発表された10月の国内携帯電話・PHS販売実績は25%減の144.7万台で6ヵ月連続マイナス。スマホに限れば34%減。ただしアップルやサムスンなど海外メーカーは対象外。NTTドコモ<9437>は2.5円高、KDDIは154円高で年初来高値更新、ソフトバンクは205円安と3社まちまち。図研<6947>はSMBC日興証券が最上位のレーティングでカバレッジを開始し58円高で値上がり率6位。シーイーシー<9692>は67円高で年初来高値を更新し値上がり率3位。2~10月期決算を発表し、経常利益は61.0%増の20.5億円で通期見通しの24.5億円に対する進捗率は84.0%と好調だった。