衆議院議員選挙が14日、実施される。今後4年の国政のみでなく、年明けからの国会では安保法制の見直しをはじめ原発再稼働が具体化する。日本のエネルギー政策、安全保障政策を具体的に規定していく重要な国会を迎える。
さらにマスコミ各社は独自調査の結果、自民だけで300議席を予測。調査通りなら公明党と合わせ、ゆうに3分の2を超える議席になる。憲法改正を結党以来の悲願とする自民党にとっては憲法改正への発議も現実になる。憲法改正機運を今後3年で盛り上げ、4年目に発議することも可能だろう。
公明党は現行憲法への条項を加える「加憲」の立場で自民党と異なる立場だが、連立与党として、すり合わせを図っていくことになるだろうから、さきの集団的自衛権行使の限定的容認の閣議決定までの足取りと同じく、与党内協議で方向性を見出していくことになる可能性が高い。
こうした大きなテーマに突き進む可能性がこの4年の中に現実味を増していることを考えれば、今回の総選挙は、戦後の総選挙の中で最も大きな意味を踏まえた選挙といえよう。
それだけに各党を選択する材料、判断基準はそれぞれ個人の考えで違うが、一人でも多くの有権者が一票を投じることが何より民主主義国家において、大事な行為であることを改めて呼びかけたい。
さて、選挙公示からこれまでの街頭演説では、安倍晋三総理や閣僚、自民党幹部が争点に訴えるのは、アベノミクス、経済政策に集中し、世論を2分する原発再稼働や集団的自衛権行使容認閣議決定とこれに伴う来年からの安保法制の見直し具体化への問題などにはほとんど触れていない。
安倍総理は安保については「日本人の命を守り、領土や美しい海を守るために来年、きっちりと法制度を行っていく」とそれだけを伝え、多くは語らなかった。しかし、選挙に大勝すれば、安保法制の見直し、さきの閣議決定は「国民に承認された」と国会で答弁することになろう。演説で触れていることは確かなのだ。
原発はどうか。「安全性の確保を大前提に、重要なベースロード電源として活用していく」「再稼働においては安全性の新規制基準に原子力規制委員会が適合すると認めたものは、その判断を尊重し、再稼働を進める」と再稼働を進めるのは原子力規制委員会の判断を尊重しての判断とも受け取れる表現をしている。いずれにしろ、原発活用、再稼働推進の姿勢を明確化した。
しかし、明確化しているのは党の政権公約(マニフェスト)での表記であり、安倍総理はこの話を前面に出した遊説はしていない。鹿児島県薩摩川内市では「日本に電力の供給を頂いている。安全第一の上に皆さんの理解を頂きながら、しっかりとしたエネルギー政策を進めていく」と感謝の弁とともにエネルギー政策を進めるというにとどめ、再稼働に触れなかった。
公明党は、原発に関して「ゼロを目指す」としている。ただし、「再稼働については新規制基準を満たすことを大前提に国民や住民の理解を得て判断する」とする。
政府・与党はさきの九州電力川内原発の再稼働に「地元の同意」の範囲に、行政区割りで立地の自治体だけを地元同意の対象にし、薩摩川内市と鹿児島県の首長の同意にとどめ、半径30キロ圏内すべての自治体の同意を取り付ける必要があるとの判断は川内原発においてはしていない。その実効性を考えれば、すべての自治体を対象に同意を取り付けるべきで、この点は今後の国会議論を待つしかない。
野党の主張をみると、民主党は「2030年代原発ゼロへ、あらゆる政策資源を投入する」。再稼働については「責任ある避難計画がなければ、すべきでない」。
維新の党は原発再稼働には「核のゴミの最終処分の解決なくして原発再稼働なし」とし「原発再稼働責任法」を制定するとしている。
次世代の党は「新エネルギー技術の開発、原子力技術の維持」をあげ「電源の多様化で脱原発依存」を図るとしている
日本共産党は「即時原発ゼロを決断し、すべての原発を直ちに廃炉プロセスへ進めていく」としている。
生活の党は「原発の再稼働・新増設は一切容認しない。原発はすべて廃止。脱原発こそ、成長戦略」と党の政策重要課題にあげる。
社民党は「脱原発社会」をかかげ「脱原発基本法を制定」。原発再稼働については「川内原発含め原発再稼働は一切認めない。原発の新増設はすべて白紙撤回。福島第一原発5・6号機と福島第二原発1~4号機、活断層の上に立地することが明らかとなった原発は直ちに廃炉」としている。
新党改革は「脱原発する保守政党」とし「再生可能エネルギーと高効率火力発電所と組み合わせることで原発は不要になり、再稼働の必要もなくなる」としている。
安保も原発も、それぞれの有権者が自らのこととして判断し、投票所に足を運ぶことを期待したい。(編集担当:森高龍二)