2014年、国内の自動車販売は、3月まで面白いほど売れていた新車が、4月の消費増税以降ピタリと止まり、手のひらを返したよう売れなくなった。2014年1月~3月までの累計販売(登録乗用車)で前年比117.1%だった数字が、1月~11月を見ると100.5%と、かろうじて前年を上回るものの、販売台数の差は僅かに1万3000台ほど。直近の11月販売実績だけで前年を4万台ほど下回っており1月~12月期累計で、前年割れが確実だ。
このような状況のなか、仏ルノー・ブランドが1月~11月累計で前年比127.3%(日本自動車輸入組合調べ)と気を吐いている。ルノー・ジャポンによれば、「数年前には年間で2000台を割る販売台数だったが、今期4500台達成はほぼ間違いない」という。もちろん過去最高である。
この大きな上振れに貢献したのは、ルノー・ジャポンが今期毎月のように実施した「特別限定車戦略」と、昨年9月から日本市場に投入した新型ルノー・ルーテシア(本国名:クリオ)だ。そのルーテシア、1月~11月で実に1696台販売され、ルノー・ジャポンの看板娘に成長した。これまでのルノー・ジャポンの売れ筋だった多目的車カングーと2枚看板となったわけだ。
このルーテシアは、日本のマツダから移籍したデザイナーのローレンス・ヴァン・デン・アッカー氏が発案・発表した新しいデザイン戦略「サイクル・オブ・ライフ」に沿ってデザインされた初の市販車。「サイクル・オブ・ライフ」の最初のステージである「LOVE」をテーマとする情熱的なデザインが特徴のモデルだ。欧州でも3位に着ける好成績で、Bセグメントでは欧州フォード製のフィエスタに次ぐ2位の位置にある。
日本向けルーテシアには、「インテンス」「ゼン」「GT」の3グレードに共通の1.2リッター4気筒直噴ターボエンジンと、スムーズで高効率なトランスミッション6速エフィシエント・デュアル・クラッチを組み合せたパワートレーンが採用されている。それらモデルは2リッターエンジン搭載車に匹敵する性能を発揮。あたかも2ドア車に見える個性的でスポーティなデザインとこの高い動力性能が日本でも評価された。
そして2014年末、ルーテシア・ゼンに、897ccの3気筒ターボエンジンと5速マニュアル(MT)を組み合せたルーテシア・ゼン「0.9Lターボ」を追加発表した。ボディ寸法は1.2リッターモデルとまったく同一の全長×全幅×全高4095×1750×1445mm、ホイールベース2600mm。
今回、新たにルーテシア・ゼン「0.9Lターボ」に搭載した897ccターボエンジンのボア×ストロークは1.2リッター4気筒エンジンと同じ。その4気筒のうち1シリンダーを省略したブロックと思えばいい。そのエンジンは90ps(66kW)/5250rpmの最高出力と1.4リッターエンジン並みの最大トルク13.8kg.m(135Nm)を2500rpmで発生、そして最大トルクの90%を1650rpmという低回転から発生する街中で扱いやすいエンジン特性を持つ。
また、ギアをニュートラルにしてクラッチから左足を放すとアイドリングストップし、クラッチを踏むとエンジンがスタートするストップ&スタート機能の採用で燃費性能も向上した。組み合わされる5速MTにはヒルスタートアシストが装備され、坂道発進でドライバーをサポートする。
エクステリアは、ルーテシア・インテンスと同様のブリリアントブラックパーツとクロームメッキフィニッシャー、そして16インチブラックアロイホイールを採用してデザイン性を高めた。
都内の一般道で乗った限りでは、車重1130kgで1リッター未満のエンジン搭載車とは思えないほどの活発な走りをみせた。必要以上にエンジンを回さず2000rpmあたりでシフトアップする、ある意味“ずぼら”な運転でも軽快に走る。いったんアクセルを深く踏み込むと元気のいいエンジン音を発しながら、トルクの太さが際立つスムーズで素早い加速をみせる。交差点からのスタートなどでも、楽々と都内の流れをリードすることができる。そして何より、仏車らしいしなやかな乗り心地が美点だ。
この追加モデル「0.9Lターボ」は、年明けの1月8日から、全国のルノー正規販売店で販売を開始するという。価格は1.2リッターの「ゼン」よりも14万円ほど安い208.0万円。
ルノー・ジャパンでは、もうひとつフレンチ・スポーツHB(ハッチバック)車好きのファンにサプライズを用意している。それについては別項で報告する。(編集担当:吉田恒)