政府が時間でなく成果で評価する働き方として設けようとしている「高度プロフェッショナル制度」について、さきの衆議院予算委員会で、共産党の志位和夫委員長は「制度の最大の問題は週40時間、1日8時間が法定労働時間、それを超えるのは時間外労働時間という考え方を完全に放棄してしまっていること」と指摘し、「過労死が蔓延するのでは」と問題提起した。
これに、安倍晋三総理は「対象業務や年収について、法律により厳格な要件を定めています。定めるとともに、対象者の健康が損なわれることのないよう、在社時間等を把握したうえで、一定の休日を必ず与えるなどの措置を求めることにしている」と答弁。
志位委員長は対象になる労働者が限定されているとする総理答弁を受けて「労政審の建議では対象労働者を年収『平均給与額の3倍を相当程度上回る』と法律で決めた上で、具体的な年収額については1075万円を参考に省令で規定するとしているが、平均給与の3倍というのはどういう根拠に基づくものか」と質した。
これに塩崎恭久厚生労働大臣は「1000万円以上の水準を確実に担保するとともに、労働条件についての高い交渉力があることを示すうえで、適当な水準として設定したもので、月26万1000円(毎月の勤労統計調査)×12カ月×3倍ということで約940万円を相当程度上回るというふうな計算になる」と説明。
志位委員長は「巨大組織と個人との間で対等な交渉などありえない。他の仕事をもっている個人事業主だったらいざ知らず、企業における仕事が唯一の生活の糧である労働者が企業と対等に交渉などできるはずがない」と、交渉力について実効がないことを提起。そのうえで「平均給与の3倍などというのは、長時間労働、過労死を防ぐ保証などにはなりえない」とした。
また「この制度がいったん導入されたら、法律を変え省令を変えればどんどん(適用基準が)引き下げられることになることは火を見るよりも明らか。もともと日本経団連が2005年に行った『ホワイトカラーエグゼンプションに関する提言』では『年収400万円以上』の全労働者を労働時間規制の適用除外にしていた。日本経団連の榊原定征会長は全労働者の10%が適用を受けられる制度にすべきと語っている」と労働者にとってリスクの高い制度だと問題視した。(編集担当:森高龍二)