NHK「マッサン」効果で国内ウイスキー売上急伸。国際的には中国、インドがガブ飲み

2015年03月07日 20:17

ウィスキー

NHK連続テレビ小説「マッサン」こと竹鶴政孝氏が創業したニッカウヰスキー「余市蒸溜所」。日本でもっとも人気のある工場見学施設でもある

 ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝氏をモデルにしたNHKテレビ朝のテレビ小説「マッサン」の放映が始まった昨秋から、ウイスキーの売上が急伸している。ニッカウヰスキーだけでなく国内ウイスキーでトップのサントリーですらも増える注文に応じきれない。国産高級ウイスキーが店頭で品薄で、欠品が続いている。当面はこうした状況が続くと両社ではみている。

 ウイスキーの製造は、朝ドラ「マッサン」のなかで主人公エリの夫であるマッサンが呟いていたように、「数年以上という時間がウイスキーを育てる」ものだ。高級なウイスキーは一般的に熟成させるために12年以上寝かせる。だから急に出荷量(生産量)を増やすことは出来ない。

 ニッカウヰスキーの昨年の会見では、原酒そのものの量よりも生産工程の過密で、社員の過重労働負担が大きく、瓶詰め工程が追いつかないという。創業者の名を冠した主力の高級ウイスキー「竹鶴」は昨年9~12月に前年の同期比で2.6倍も売れた。北海道余市町の余市蒸溜所と仙台市の宮城峡蒸溜所でつくった原酒は通常、千葉県柏市の工場で瓶詰めする。現在「竹鶴」の瓶詰めは、本来はアサヒビールが焼酎をボトリングする北九州市の工場をも使って生産増に対処しているという。

 筆者が懇意にしている業務店との取引が多い大型酒販店バイヤーの話によると、「竹鶴」「余市」や「山崎」「響」などの長期熟成ウイスキー(つまり高価な商品)が欠品し、売り場から消えているという。

 ウイスキーの国内市場は、サントリーが2007年あたりから積極的にPRしたハイボール人気で2008年に底を打った。が、その中心は「ブラックニッカ」や「サントリー角瓶」など大量につくる普及品。ところが、「マッサン」効果で、少量生産の高級品に人気が広がり品薄になった。

 サントリーでは現在、ブレンドする前のモルト原酒が不足しており、将来的な安定供給のために出荷量を減らしている。出荷量の調整は山崎蒸溜所原酒で4年ぶり、白州蒸溜所原酒では初めてのことだという。品薄になっているのは、サントリーの「山崎」「白州」のシングルモルトが中心。

 ニッカで品薄となっているのはピュアモルト「竹鶴」とシングルモルトの「余市」「宮城峡」ブランドだという。

 グローバルなウイスキーの売上も伸長している。とくに中国やインドなどで“ガブ飲み”といえるほどの高い伸びを見せている。これら新興国市場では、まだジョニーウォーカーやシーバスリーガルなどのブレンデッドウイスキーの人気が高い。が、数年後を睨んだアナリストの見解によれば、シングルモルトの人気が一挙に拡大するという。そうなった場合、両国の人口から想像するにモルト原酒の不足は目に見えている。10年後、世界の酒類市場でウイスキーの高騰が始まる。

 サントリーは、「山崎」「響」「白州」などを3月から値上げすると発表済み。人気のシングルモルト「山崎12年」(700ml)は、標準的な小売価格で1500円ほどの値上げとなり1本8500円になる模様だ。サントリーでは、輸入している麦芽やトウモロコシなどの高騰を理由に挙げる。が、冒頭でも記したように、ウイスキーが商品として店頭に並ぶには、10年以上の熟成時間が必要なのに、何故?(編集担当:吉田恒)