日本とEUのEPA、政府調達のさらなる開放で対立

2015年03月18日 07:14

 日本と欧州連合(EU)は経済連携協定(EPA)の年内妥結を目指して交渉を続けている。この交渉の中で難問として浮上してきたのが、政府が物品を買い入れたり公共事業を発注したりする「政府調達」のさらなる開放だ。

 EU側は、EUでは85%の政府調達が海外企業に開放されているのに対して、日本は28%にとどまっていると批判している。政府調達の開放は、EUが一貫して各国に要求してきた分野だ。EUは米国との交渉においても、米国の一部の州で米国内企業から調達を優先する「バイ・アメリカン」条項が残っていることを問題視している。

 日本は、「政府調達に関する協定」(1981年発効)を結び、政府調達に内国民待遇の原則と無差別待遇の原則が適用された。その後、日本はWTOの「政府調達に関する協定」(96年発効)が結び、政府調達の適用範囲を新たにサービス分野の調達や地方政府機関による調達にまで拡大した。さらに97年以降、協定の適用範囲を拡大するための改正交渉が行われ、2012年3月に「政府調達に関する協定を改正する議定書」(14年発効)が採択され、協定の適用を受ける機関とサービスがさらに拡大した。この結果、政府調達の範囲は「地方自治法の適用を受ける全ての都道府県及び指定都市」にまでひろがった。

 ところが、2月23日から27日までブリュッセルで開かれた日本とEUのEPA交渉会合で、EU側は政府調達の適用範囲を市町村レベルに拡大することを要求してきたのだ。日本側は、政令指定都市までを対象とする現在の姿勢を崩さず、両者の対立が続いている。

 EU側は強硬だ。すでに13年11月には、欧州議会の国際貿易委員会が、EU企業に政府調達を開放していない国の企業にEU内での同分野での入札に参加させないようにする法案を可決している。

 日立製作所<6501>などの日本企業が英国で鉄道事業を受注したのを受け、欧州の鉄道業界では日本の鉄道市場の閉鎖性に対する不満が高まった。そこで、EUはJR東日本、JR東海、JR西日本をWTOの政府調達協定の対象から除外されていることに異議を申し立ててきた。この問題は、昨年10月末にEUが異議を撤回して解決したものの、政府調達の開放を求めるEUの圧力は弱まりそうにない。(編集担当:久保田雄城)