大手企業を中心に業績が好転するなかで、依然として中小企業を中心に人手不足感が解消をみせていない。しかし、人手不足は続いているが、そのタイプに変化が起きているようだ。東京商工リサーチは2015年3月の「人手不足」関連倒産調査を実施し、1日にその結果を発表した。それによると、同社では、これまでも「人手不足」関連倒産を集計してきたが、これまでは主に代表者死亡や入院などによる「後継者難」型、経営幹部や社員の退職に起因した「従業員退職」型が中心だった。しかし、最近は「求人難」型の増加が目立つようになったという。
2015年3月の「人手不足」関連倒産は速報値で17件(前年同月28件)だった。これを受けて、2014年度(2014年4月~2015年3月)の合計が304件(前年度比13.4%増、前年度268件)に達した。年度の推移を振り返ると14年4月が27件、5月が30件、6月が24件、7月が30件、8月が24件、9月が29件、10月が21件、11月が28件、12月が25件、15年1月が27件、2月が22件である。
14年度の内訳は「後継者難」型が266件(前年度241件)、「求人難」型が26件(同11件)、「従業員退職」型が12件(同16件)となった。事業継承の課題が深刻化していることを背景に「後継者難」が圧倒的だが、「求人難」型が前年度より2.3倍に増加したことが目を引く結果となった。「求人難」は景気改善の制約要因になる恐れもあるため、今後の推移が注目されるとしている。
また、最近では、人件費高騰による負担増から資金繰りが悪化し倒産に至るケースも発生しているという。「人件費高騰」関連倒産は、3月が速報値で1件(前年同月3件)だが、2014年度の合計は29件(前年度比141.6%増、前年度12件)になった。同社では人手不足や人件費高騰は中小企業の重しになっているとしている。
このような人手不足のタイプの変化をどうとらえるべきだろうか。求人難型が増加しているということは、失業率の低下につながりそうなものだが、そう簡単にはいかないのだろう。(編集担当:慶尾六郎)