それを占う上で最大の材料になる3日発表のアメリカの雇用統計は、非農業部門雇用者数は12.6万人増で前回29.5万人増、市場予測24.5万人増の約半分と大きく下回り、失業率は5.5%で前回とも市場予測とも同じだった。かなりのネガティブサプライズ。「アメリカは3月も寒かった」などとお天気のせいにする言い訳が出そうだが、直後の為替のドル円は118円台まで急速な円高進行。日経平均先物の大阪夜間取引は19500円から43分間で180円も下落し、終値は19350円だった(CMEは休場)。
この雇用統計の「聖金曜日の受難劇」の衝撃を世界で最初に織り込む株式現物市場は6日の東京市場で、その次は復活祭&清明節休暇で休場の上海、香港、ヨーロッパをパスして6日から開くNY市場になる。だから6日の東京市場は始値でどこまで下がるか、世界の市場関係者の注目の的になるはず。何というめぐり合わせの悪さ。復活祭(イースター)は「春分後の最初の満月直後の日曜日」と決まっている移動祝祭日だが、この都市のすべての悲しみが、突然やってきた、などと月の満ち欠けを恨んでもしかたない。
6日の東京市場は為替のドル安・円高とアメリカの景気先行き不安で輸出関連銘柄を中心に売られ軟調になると思われるが、6日のNY市場は、もしISM非製造業景況感指数まで悪化しても、「これで利上げが遠のく」という観測で、むしろ堅調かもしれない。FRBの金利政策にからみ、経済指標と株価が『マクベス』の3人の魔女の言葉のように「良いは悪い、悪いは良い」という倒錯した関係になっているからだ。
だとしても、7日、8日の東京市場は下落しやすい「SQ週の火曜日、水曜日」にあたるという、これまためぐり合わせの悪さが待っている。その両日には日銀会合が開かれるが、あのサプライズからまだ半年足らずで「黒田さんの贈り物」などを期待してはいけない。今週は日経平均19000円割れは覚悟で、問題は「週間500円ボックス」の位置がどこまで下がるか、だろう。
そこで、3日の日経平均終値19435.08円のテクニカルポジションの確認。前週は防衛線になると思われた25日移動平均線をたびたび割り込んだが、金曜日の高値引けで5日移動平均の19280円も、25日移動平均の19205円も全て現値より下になった。ボリンジャーバンドでは18859円の25日線-1σと19550円の25日線+1σの間にあってニュートラル。日足一目均衡表の「雲」は17728~18215円で75日移動平均の18140円を包み込んだが、今週の下限は17765~17786円、上限は18346~18414円で、もくもくわき上がったがローソク足への接近は来週になるだろう。
オシレーター系指標は+1.19%の25日線乖離率も、102.68の25日騰落レシオも、39.19のストキャスティクス(9日・Fast)も、54.5のRSI(相対力指数/9日)も、50のサイコロジカルラインも、買われすぎでも売られすぎでもない数値。売られすぎなのは-72.0のRCI(順位相関指数)ぐらいだった。
本来なら上値も下値も両方取りに行けるポジションだが、雇用統計ショックで水準をかなり下げて週が始まると予想され、しかも下げやすいSQ週なので19000円割れも覚悟。また、前々週の権利確定イベント通過以降の売買高、売買代金が減少傾向で3日には20億株割れ、2兆円割れをきたし、上値追いのエネルギーは3月よりも減衰している。そのため上値は19205円の25日移動平均線、19225円の3月のSQ値、19280円の5日移動平均線が集まる19200円台に「レジスタンスライン」ができると想定し、中間をとって19250円とみる。一方、下値は週間上下500円のボックス圏が続くと想定すれば自動的に18750円。ボリンジャーバンドの25日線-1σの18859円がその付近にある。今週は19000円をめぐる攻防になるだろうか。
ということで、今週の日経平均終値の変動レンジは18750~19250円とみる。雇用統計ショックで東京市場の先行きは一気に不透明になった。「酒田五法」の「波高い線」は、その次が下放れたら下落トレンドに転換するといわれているが、マーケットの行く手にはいったい何が待ち構えているのだろう? 「彼らは巨大な空の真下に、頼りなげに立ち、彼らのまわりのあらゆる物が消えていく。どこへ行くのか? 何をするのか?--何のために?--眠ることだ。でも、このおろかしい一行は前へ進んでいた」(ジャック・ケルアック『路上』)(編集担当:寺尾淳)