【今週の展望】3月SQ値の19225円をたたくこともある?

2015年04月19日 20:36

 日経平均が25日移動平均線に接近して乖離率は+0.4%なので、ボリンジャーバンドは25日線-1σ(19329円)と+1σ(19833円)の間のニュートラルゾーンのど真ん中。騰落レシオは99.3、RSI(相対力指数)は57.2、ストキャスティクス(9日・Fast/%D)は70.03、サイコロジカルラインは58.3で、オシレーター指標で明らかに「買われすぎ」を示すのは58.0のRCI(順位相関指数)ぐらい。かといって「売られすぎ」を示すシグナルも見られない。「雲」の中にでも落ちれば、点灯するのだろうが……。

 では、前週後半の軟調でテクニカル指標もこなれてきたので、今週は出直しの再上昇で2万円に再チャレンジかというと、そうは問屋が卸さない。気になる点が二つある。

 まず、決算発表シーズンに入ること。今週は安川電機、東京製鐵、日本電産あたりから3月期決算注目銘柄の決算発表が始まる。投資家もアナリストも関心を持つのはもっぱら決算短信の表紙の一番下にある今期、2016年3月期の業績見通しだが、これは銘柄によって数字の出し方に多少クセがあり、最初から大幅増収増益や業績V字回復の見通しを打ち上げるところもあれば、当初は小幅の増収や増益、中には減収や減益も混じるような控えめな見通しを出し、後で上方修正するところもある。国内の銘柄はどちらかと言えば後者のほうが優勢で、「市場予測に届かない」という理由であっさり売られたりして株価の頭が抑えられる傾向がある。連休をはさんで5月前半までは、そんな決算発表シーズン独特のムードが漂っていることを考慮する必要があるだろう。

 過去20年、日経平均の5月の月足は9勝11敗の負け越しで、2010年から2013年までは4年連続「セル・イン・メイ(5月に売れ)」。2014年はプラスだったが、消費増税後の業績見通しがそれほど悲観的でなかったという「安心感」で買われた一面があった。

 もう一つ、需給にも気になるデータがある。15日に東証が発表した10日時点での「裁定買い残」は4週連続で増加し3.6兆円に達した。1月16日時点の2.3兆円から12週が経過して、減少したのは3月13日時点の1週しかなく、1.3兆円増加した。

 実は昨年の後半以降、裁定買い残は3.5~3.6兆円で天井を打ち、その翌週以降、1ヵ月余りで1兆円を超える減少をみせている。1回目は昨年9月26日時点から10月24日時点で、3.6兆円から2.4兆円に減り、その間に日経平均は938円下落した。2回目は昨年12月5日時点から今年1月16日時点で、3.5兆円から2.3兆円に減り、その間に日経平均は1056円下落した。

 2万円にタッチした10日時点の3.6兆円がその天井を意味し、同じ現象が繰り返されるとすると、日経平均は5月の連休明け、3月期決算発表がほぼ終了する15日頃までに1000円前後、18900円あたりまでの下落を覚悟しなければならないことになる。

 ちなみに、裁定買い残が一昨年12月27日時点の4.0兆円から昨年2月28日時点の2.6兆円まで1.4兆円も減少した時は、日経平均は約2ヵ月で1337円も下げていた。

 もちろん、新規に設定されたばかりの日本株の大型投資信託が「爆買い」されて買付け注文が停止されたとか、東京市場に海外の年金資金など「筋のいいマネー」が入っているといった話もあり、年金資金や日銀の買いが下支えになって19000円台後半の高値圏は維持されるという見方も根強いのだが、「次の2万円チャレンジはいつか?」を考えるとき、決算発表シーズン入りという要素、裁定買い残の積み上がりという要素は、心に留めておくべきではないだろうか?

 今週もアメリカのマクロ統計の悪さやドル高懸念による為替のドル安・円高はなお続きそうだ。ギリシャの債務不履行懸念もNYダウの押し下げ要因。さらに東京市場では今週5件、来週も5件の新規IPOがあり、投資家の関心や資金が「2万円まつり・エピソード2」よりもそっちに向かうかもしれない。中には現在の資本金の約10倍という分不相応な資金の調達を目論む銘柄も控えている。

 そのように、テクニカル的には買われすぎがほぼ解消して上値追いができそうに見えても、今週から5月前半にかけての東京市場とその周辺の状況は、あまり良い環境とは言えなくなっている。

 それらを勘案すれば、2万円への再チャレンジは、それにタッチした10日から1ヵ月以上経過し、決算シーズンがほぼ終わる5月15日ごろまではお預けになると思われる。もっとも、30日にまさかの日銀の追加緩和でもあれば一気に2万円台に乗せてしまうだろうが……。少なくとも今週は、上値では19800円台を回復したとしても19900円台に戻るのは厳しく、25日線+1σの19833円、5日移動平均線の19844円のあたりの19850円が限界とみる。

 一方、下値はかなり下落してしまう局面もあるだろう。なぜなら、裁定買い残がまだ積み上がっているため、前週の後半のような先物のポジションを調整するゲリラ急落がたびたび起こりそうで、一度かまれたらヘビを見ただけで逃げ出したくなるという行動ファイナンスでいう「スネークバイト効果」で、投資家心理も弱気に傾きそうだからである。25日移動平均線の19581円も25日線-1σの19329円も割り込んで、下手をすれば3月13日のメジャーSQ値19225円をたたき、その近辺がサポートラインになってようやく下げ止まることもあると予想する。

 ということで、今週の日経平均の変動レンジは上下動が大きくなり19200~19850円とみる。でもそれは、トレンドの転換ではなく一時的な調整局面。日経平均が数分間でも2万円に乗ったことで、半年で約5000円の上昇ペースから計算して「年内に25000円」とか「来年は3万円」とか言っていた人もいたが、それもそれで大いに結構なこと。夢を見なくなったら、株式投資も人生もつまらない。「夢は食べ物と同じように我々には必要不可欠なものだ。それなしでは死んでしまう」(ウィリアム・S・バロウズ)(編集担当:寺尾淳)