求められる「国益に適う言動」

2015年04月25日 13:17

 靖国神社の春季例大祭のこの時期に繰り返し行われる閣僚による靖国神社への参拝。残念ながら、今年もあった。

 中国や韓国などとの関係に影響が出るため、個人の心情(信条)より、賢者の選択として、閣僚は参拝を控えてほしいと願っているが、日中、日韓関係改善より、個人の信条や国を愛する心をアピールするためか、何人かの閣僚は当然のように参拝する。

 その度に、A級戦犯を靖国神社から分祀すべきかどうか、政教分離の観点から、靖国神社とは別に戦没者を慰霊する無宗教施設を建設すべきではないかを国会において真剣に議論すべきと提起してきた。靖国神社は宗教法人だから、A級戦犯を合祀するか、分祀するか、政治が介入すべきではないとの意見も当然のごとくに存在するが、閣僚の参拝が常に外交問題に発展しそうな状況が続く以上、国益を考えても放置できる案件ではなくなっている。

 A級戦犯合祀以来、昭和天皇は靖国神社への参拝をなされなかった。その意味をひも解く必要もあるだろう。

 今回、靖国神社参拝で注目されたのが、教育勅語を素晴らしいと語る高市早苗総務大臣。山谷えり子拉致問題担当大臣、有村治子女性活躍担当大臣の女性3閣僚の参拝だ。

 高市大臣は、玉串料は私費ながら「国務大臣」と署名した。国務大臣の立場で参拝したといわれても仕方がない。高市大臣は「国家のために命を捧げられた方を追悼することに、外交問題であるべき性質のものではない」とする。

 しかし、こちらの意ではなく、相手国がどのように受け取り、対応するかが、外交問題の尺度になる。参拝が批判を招く事態なら、まさに外交問題となる事案として認識することこそ必要。

 中国外務省副報道局長は「A級戦犯を合祀する靖国神社に(閣僚が)参拝するのは、歴史に対する間違った態度を表するもの」とし「(閣僚の参拝に)断固反対する」と強く批判した。

 安倍総理の戦後70年談話に対する野党各党の質問に対するこれまでの国会答弁でも、歴史認識に対して村山談話や小泉談話で示された歴史認識を安倍政権は変更するのではないのかと国内外で懸念の声が出ている。そうした中での閣僚の靖国神社参拝とその時の発言は、戦後70年の中で、いつも以上に神経を配ることが必要だ。

 国を愛する心の大切さをアピールすることより、閣僚として自らの言動が発信する影響力に気配りし、国益を優先した賢者の対応をお願いしたい。(編集担当:森高龍二)