【自動車業界の2015年3月期決算】国内の販売減を海外でカバーできれば好業績、できなければ業績ふるわず

2015年05月14日 07:50

 5月13日、自動車業界の2015年3月期本決算が出揃った。2014年度(4~3月)の国内新車販売台数(軽自動車を含む)は6.9%減の529万7110台にとどまり、消費増税の影響が長引いている。大手8社で年度の販売台数がプラスだったのは軽自動車税増税前の駆け込み需要があったスズキだけだった。一方、大手8社の2014年度の世界生産実績速報値は1.4%増の2611万3960台で、海外での生産・販売はおおむね堅調。決算は、トヨタや日産やマツダや富士重工のように国内の販売不振を海外でカバーすることができれば好業績、新興国や小型車の不振の影響が大きく、それができなければ業績ふるわずと、明暗が分かれた。2016年3月期の今期見通しは、マツダ、三菱、ダイハツのように新興国通貨の下落を懸念して最終減益を見込んでいるところがある。

■北米で稼いだトヨタ、日産、富士重工は好調

 2015年3月期の実績は、トヨタ<7203>は売上高6.0%増、営業利益20.0%増、税引前当期純利益18.5%増、最終当期純利益19.2%増の増収、2ケタ増益。年間配当は前期比35円増の200円だった。当初は足場固めの「意志ある踊り場」(豊田社長)と想定していたが、結局上方修正2回で過去最高益を更新。世界生産台数は894万台、世界販売台数は1016万台でフォルクスワーゲンに2万台及ばずトップの座を譲ったが、北米でSUV「RAV4」や「カローラ」が販売を伸ばしアメリカの工場の稼働率は90%台の高水準。円安の恩恵も受け、北米で得た収益で11.0%減の146万台に終わった消費増税後の国内販売の不振を補った。

 日産<7201>は売上高8.5%増、営業利益18.3%増、経常利益31.7%増、当期純利益17.6%増の増収、2ケタ増益。年間配当は前期比3円増の33円だった。2014年度の国内販売台数は13.3%減の62.3万台と不振で、東南アジアや中南米の一部でも苦戦したが、8.9%増のアメリカや13.9%増のヨーロッパ(ロシア以外)がカバーし世界販売台数は2.5%増の531.8万台。為替の円安に加えコスト削減の効果が出て大幅増益を確保した。

 ホンダ<7267>は売上高6.8%増、営業利益13.1%減、税引前当期純利益5.4%減、最終当期純利益8.9%減の増収減益。年間配当は前期比6円増の88円だった。新型「フィット」の相次ぐリコールで新型車の発売が遅れ、タカタ製エアバッグのリコール問題も追い討ちをかけ2014年度の四輪車の国内生産台数は7.4%減の86万台。国内販売台数は目標の103万台に対し7.4%減の75万台にとどまり、リコール費用がかさんで減益になるなど誤算続きの1年だった。世界販売台数は436.4万台にとどまった。

 マツダ<7261>は売上高12.7%増、営業利益11.4%増、経常利益51.1%増。当期純利益は17.0%増で過去最高益更新。年間配当は前期比9円増の10円だが、2014年8月1日に5株を1株にする株式併合を行っているので実質5円の増配。最終利益約4倍という前期の大幅V字回復に比べると落ち着いたが、それでも2ケタの増収増益で好調。国内生産台数は5.5%減の91万台、国内販売台数は8%減の22.5万台にとどまったが、欧米市場で「CX-5」「アテンザ」、「新型デミオ」(日本での車名)が好調で海外販売台数は7.8%増の117.2万台と伸び、円安が進んだ為替要因で営業利益が170億円押し上げられた。

 富士重工<7270>は売上高19.5%増、営業利益29.6%増、経常利益25.2%増、当期純利益26.7%増の増収増益。年間配当は会社予想を上回る前期比15円増の68円。国内販売は10.4%減の16万台と苦戦したが、世界販売台数は10.4%増の91.1万台。軽から撤退した「選択と集中」で地域は北米、車種は利益率が高い多目的スポーツ車(SUV)に絞り込み、依然好調。営業利益、経常利益が3ケタ増収だった前期と比べれば数字は落ち着いたが、それでも2ケタの増収増益だった。

 三菱自動車<7211>は売上高4.2%増、営業利益10.1%増、経常利益17.1%増、当期純利益12.9%増の増収増益。年間配当は前期比9円減の16円だが、前期は特別配当10円がついたので実質1円の増配。プラグインハイブリッド車の「アウトランダーPHEV」が特にヨーロッパで好評だったが、国内販売は19.9%減の11.5万台と悪く、タイなど主力のアジア地域で苦戦して世界販売台数は4%増の109万台と伸び悩んだ。それでも為替の円安やコスト削減の効果で増益を確保している。

 スズキ<7269>は売上高2.6%増、営業利益4.4%減、経常利益1.8%減、当期純利益9.9%減の増収減益。年間配当は前期比3円増の27円だった。国内も海外も生産台数、販売台数がともにプラスなのはスズキだけで、2015年4月の軽自動車税の増税前の駆け込み需要があり国内生産は5.7%増の105万台、国内販売は3.8%増の75万台、海外生産も6.9%増の198万台だった。しかし国内は販促費を投じたダイハツとの熾烈なシェア争いに加えてリコール関連費用もかさみ、6年ぶりの営業減益を余儀なくされた。

 ダイハツ工業<7262>は売上高5.0%減、営業利益24.6%減、経常利益22.3%減、当期純利益18.6%減の減収減益。年間配当は前期比8円減の48円だった。消費増税の影響が長引き、軽自動車税の増税前の駆け込み需要の恩恵もあまり受けず国内生産台数は3.8%減の77.7万台、国内販売台数は1.7%減の68.9万台。これまで新車販売台数の4割を占め車名別でも上位を占めてきた「軽」も増税で陰りが見えている。