何でも「草食化」「ゆとり教育」の言葉片付けようとする風潮には抵抗があるが、少なくとも「仕事が生きがい」「出世してリッチになりたい」というような考え方は、時代遅れとなりつつあるということなのかもしれない
たとえば今の若い人が、年配の人から「あなたにとって、仕事とは何か?」と尋ねられたら一体どう答えるのだろうか?なかには「生きがいです」と答える人もいるだろうし、なかには無言でただ眉をひそめるだけの人もいるのかもしれない。恐らくその無言には「そんなこと、答えられるわけがない」という抗議の意味が込められているだろうし、ひそめた眉には質問そのものがナンセンスであることへの冷笑が込められているのかもしれない。もちろん、これはあくまで筆者の想像である。
昨今、「若者が草食化している」という言い回しをよく耳にする。それは「若者の車離れ」「飲み会にあまり参加しない(お酒を飲まなくなった)」「結婚願望が薄い」という具体例とともに語られるわけなのだが、そのうち「仕事で出世を求めない」ということも、草食化の具体例に挙げられることが多い。その草食化を裏付けるかのような興味深い調査結果が2つ公表された。
1つは、22日に西日本シティ銀行グループのNCBリサーチ&コンサルティングが発表した、今年の春に九州・山口で就職した2015年度の新入社員調査だ。そのうち、残業や給料への考え方に対する質問で、「給料が少なくても残業がない方がよい」と答えた人の割合は50.7%と半数を超えた。この調査は毎年行われており、同質問で半数を超えたのはこれが初めてとのこと。NCBリサーチ&コンサルティングはこの結果に対して、調査対象である今年度の新入社員はゆとり教育を受けた世代の中心層で、仕事よりもプライベートを優先する傾向が強いとの見方を示している。
もう1つはあしぎん総合研究所が発表した今年度の新入社員の意識調査で、そのうち「どのくらいまで出世したいか」との質問に対して、「課長・店長などリーダー職」が31%と最多であったものの、次に多かったのが「平社員のままでいい」で、22%と前年度よりも2ポイント増えた。男女ともに「平社員のままでいい」は増加しており、「部長」「役員以上」は減少しているとのことだ。
これを「若者の草食化」とみるか、あるいは「働き方に対する考えの多様化」と考えるかは、人によって異なるだろう。何でも「草食化」「ゆとり教育」の言葉片付けようとする風潮には抵抗があるが、少なくとも「仕事が生きがい」「出世してリッチになりたい」というような考え方は、時代遅れとなりつつあるということなのかもしれない。(編集担当:滝川幸平)