旨味調味料の代名詞として世界市場で認知され、企業名にもなっている「味の素」が国内生産をやめて、工場を海外に移転して、全量輸入することに決めた。国内で販売する旨味調味料「味の素」の生産は、年内に海外へ移す方針だ。原料の一部が高騰するなか、海外での一貫生産で燃料費や人件費を抑える。
「味の素」は、国内では1914年に操業をスタートした川崎市の工場だけで生産していた。サトウキビなどから取り出した糖蜜を発酵させたグルタミン酸ナトリウムを海外の工場から輸入し、不純物を取り除く精製を行なっている。
この精製の工程を年内にタイ、インドネシア、ブラジルなどの海外の工場に移管する。川崎市の工場では、精製したグルタミン酸ナトリウムを別のうまみ成分でコーティング、瓶詰めや包装する工程だけになる。「味の素」は年間で60万トンを販売。その大半は海外向けだという。
同時に従来の川崎市工場を閉鎖しパッケージングに特化した新工場を建設する計画も明らかにした。ラインを集約した最新鋭の自動化工場とすることで、生産性を3割アップさせる計画だ。現在の工場は築40年以上経った古い施設で老朽化が目立つ。工場そのものも敷地内の6棟に分散しているが、これを1棟に集約する。また、35に分散するラインも14に収斂させるという。同時に商品毎に形や大きさが異なっていたパッケージ仕様の統一、物流用段ボールなどの統一・自動箱詰めなどを進め、大幅なコストダウンを図る構えだ。
こうした改訂で、ラインあたりの稼働率が上がるため生産量ベースは現状を維持できる。しかもライン集約によって人員を削減できて、1人あたりの生産性は大幅にアップすることで、現状で続く慢性的な人手不足を解消できるとしている。
新工場が軌道に乗れば、新工場は300人ほどの従業員で稼働させられる見通しだ。が、現在の社員400名のうち7割が50歳代。定年などで人員不足が起きる。新たな人材確保が新工場の課題となる。そのため、新工場稼働後もつねにラインの見直しを行ない、新鋭ロボットの導入やIT化を進めて2020年には生産性を現在の5割アップとする方針だ。
この新工場で効率化のノウハウを固め、海外の工場などへ拡大。5割を超える海外における売上高の効率化も目指す。日本国内の食品業界は単身世帯の増加などで小容量包装が増え、その作業は細かく複雑になっている。メーカーにとってこうしたコストを如何に吸収して価格への影響を抑えることが課題となっている。「味の素」の新工場は、このあたりの最適解を導き出すことができるだろうか?(編集担当:吉田恒)