【今週の展望】SQの後は材料に素直に反応する相場が来る?

2015年06月14日 20:32

 5日時点で裁定買い残は3.7兆円と積み上がったままだったが、メジャーSQを前にして日経平均先物の6月限から9月限への乗り換え「ロールオーバー」は順調に進み、6月限の買いポジションは5日の20.6億株から9日は13.9億株へ6.7億株減少。9月限の買いポジションは5日の3.3億株から9日は10.7億株へ7.4億株増加した。メジャーSQを前に先物の9月限を新規に買い入れる動きもあった。SQ週の波乱相場は裁定解消売りがボロボロ出てくることで起きるが、ロールオーバーが順調だったということは、前週前半の裁定解消売りによる下げはSQとは別の要因によるほうが大きかったことになる。

 その一つは日米欧の長期金利の不安定さを受けてのリスクオフの動きで、もう一つは10日の国会での黒田日銀総裁の発言「さらに円安に振れることはありそうにない」への過剰気味の反応だった。

 だが、見方を変えれば、メジャーSQ週の前週にロールオーバーに加えて裁定解消売りも出て、「アク抜け」してそれまでタイトだった需給が相当ゆるんだとしたら、SQ明けの今週はまっさらな状態から新たに出直すことができ、上昇しやすくなる。過去のメジャーSQ明け週の週間騰落はおおむね良好で、前回3月は305円高、前々回の昨年12月は249円高、その前の9月は372円高だった。過去13回では11勝2敗で84.6%という高勝率をあげている。歓迎すべきデータだろう。

 12日には3月期決算の業績データが加わった『会社四季報』『日経会社情報』が発売され、新規IPOも約1ヵ月半ぶりに再開する今週は、もう需給を気にすることなく、好業績期待がある銘柄、株主還元策を発表した銘柄などが買われて、国内外の好材料には素直に上昇し、悪材料には素直に下落する反応をみせるといったように、個人投資家にとってはわかりやすいマーケットになるだろう。動きが激しかった前週と比べればいくぶん静かな週になると思われる。

 今週最大のトピックは、16~17日のFOMC、18~19日の日銀会合という日米の中央銀行イベントである。とはいえFOMCは、声明文やイエレン議長の記者会見で9月の利上げをほのめかすようなアナウンスがあるかどうかが焦点。利上げ自体はすでに既定路線だ。日銀会合については前週、「日銀当座預金の付利の撤廃」という手あかのついた話で重箱の隅をほじくった新聞があったが、長期金利が上昇しているせいか4月30日の時のような妙な追加緩和期待は影をひそめ、マーケットは「金融政策現状維持」を素直にやり過ごせるものと思われる。それでも金融や不動産などの金利敏感株には、「一応、期待はしておく」とでも言いたげな上昇局面があることだろう。

 前週はアメリカ雇用統計の発表や要人発言で大きく振れた為替のドル円レートもようやく落ち着きをみせる中、気になるのは国内外の金利情勢である。先進国が揃って低金利政策をとっていたここ数年は、債券市場に一時的な混乱が起きてもごく短期間で収拾していたが、FRBの利上げが年内にありそうな状況のもとで長期金利の上昇が日米欧と揃うと少し不気味。ドイツは1%、アメリカは2.5%、日本は0.5%のラインを大きく超えたらリスクオフの警戒警報発令になるだろう。それでもFOMCで「9月利上げ」のスケジュールが事実上フィックスされたりしたら、このところの金利の不安定ぶりも沈静化するのではないだろうか。

 12日の日経平均終値20407.08円のテクニカル・ポジションを確認しておくと、20277円の5日移動平均線も、20210円の25日移動平均線も、19676円の75日移動平均線も全て下にある。日足一目均衡表の「雲」は735円も下の19274~19672円に位置する。今週は18日に下限が19414円、上限が19721円まで上昇するが、上限は一進一退。長く雲の中にあって共に上昇してきた75日移動平均線は、12日に上限を突き破ってその上に出た。ボリンジャーバンドでは、19882円の25日線-1σと20538円の25日線+1σの間のニュートラルなゾーンに位置する。

 オシレーター系指標は週間騰落が53円安だと、5日にはまだ残っていた「買われすぎシグナル」が全て消灯した。25日移動平均乖離率は+0.97%で、騰落レシオは115.9、サイコロジカルラインは6勝6敗で50.0、ボリュームレシオは58.7、ストキャスティクス(9日・Fast)は43.1と低下。RSI(相対力指数)は49.7、急落したRCI(順位相関指数)は-90.2で-50を割り込み「売られすぎシグナル」のほうが点灯した。

 このようにテクニカル的には今週、日経平均は上にも下にも動きやすい条件が揃っているが、過去のデータで上に振れやすい「メジャーSQ後週」であることを考慮して、上値のほうはけっこう上昇ができると見込み、下値は限定的と見込む。「FOMC待ち」「日銀会合待ち」の様子見ムードが出るとしても、前週のように激しく下値をたたくようなことはないだろう。

 どこまで上値を追えるかというメドとしては5月28日の年初来高値20655円を想定する。しかしながら、20473円の「まぼろしのSQ値」がレジスタンスラインになって一定の抵抗をみせることは予想でき、さらにボリンジャーバンドの25日線+1σの20538円が上値を追い返すこともありそうだ。一方、下値のメドはボラティリティは小さくなると想定して、前週のような2万円の大台割れ寸前ということはなく、終値なら悪くても25日移動平均線の20210円あたりまでで下げ止まると予想する。

 ということで、メジャーSQを通過した今週の日経平均終値の変動レンジは、前週のザラ場ベースの528円幅よりは値幅が小さくなり、450円幅の20200~20650円とみる。

 ただ、忘れてはいけないのはユーロの宿痾(持病)、ギリシャの債務問題。18日にユーロ圏財務相会合、19日にEU財務相理事会が開かれるが、一喜一憂をひたすら繰り返すばかりのロングラン公演は今週も混迷し、NY市場にも東京市場にも梅雨空のような重苦しさをもたらしそうだ。もう芝居の観客は、あきている。物語の大団円を待っている。「どうすればよいのか?」というロードマップを見定めることができれば、問題の半分は解決したようなものだが……。「かくも悩むか知らぬこそ/悩みのうちのなやみなれ」(ポール・ヴェルレーヌ『都に雨の降るごとく』鈴木信太郎訳)(編集担当:寺尾淳)