大型観光バスの生産が追いつかない。大手が設備投資に踏み切れない理由は東京五輪

2015年08月05日 08:19

Mitsubishi

2013年の東京モーターショーで展示された「三菱ふそうエアロクイーン・ハイデッカー」。国産ハイデッカーの最上位モデルだ

 大型トラック&バス大手メーカーが観光バスの受注で活況を呈している。いすゞ自動車をはじめとした大型商用車メーカーの三菱ふそうトラック&バスや日野自動車はフル生産を続けているという。

 観光バス業界は、中国などからの訪日外国人のツアー団体客利用に加えて、日本人シニア層による国内ツアーの利用も堅調だ。バス運行会社は中古バスをも購入して需要増に応えようとしているが、車両の不足は補えていない状況になっている。

 いすゞ自動車は2015年度に14年度より20~30%多い650台程度の販売を見込む。直近10年間で最も多い販売台数だ。保有台数10台未満の小規模なバス事業者からの注文が、とくに旺盛だという。

 三菱ふそうトラック・バスでも、2015年の大型観光バスの販売台数は、前年比7%増の800台となりそうで、注文数をこなせない状態だという。同車の富山県内の生産拠点はフル稼働を続けている。8月のお盆明けごろに塗装ラインを数億円かけて新設し、従業員の残業や休日出勤を増やすなど対策を急いでいる。

 観光バス最大手の日野自動車は、2015年度に昨年同期の販売台数877台を上回る900台規模を計画。荷物の積載スペースの広い車種が「爆買い」の中国人観光客を集めるバス会社に好評だという。

 観光バスの車両価格は、三菱ふそうエアロクイーン「ハイデッカー」や日野セレガクラスの高級仕様で2700万〜4000万円ほどと言われるが、装備やオプション、シート配列など、ほぼオーダーメードで、豪華装備の高級車両になると5000万円を軽く突破するといわれる。

 業界推計によると大型観光バスの国内販売台数は、2015年に前年比116%の2400台超と見込まれる。バス運行事業者の注文は相次ぐが、商用車各社の生産能力が追いつかず、大きく伸びない状況だ。観光バスは通常、仕様を決めてから半年ほどで納車されるが、現在は「年内の納車も難しい」状況だという。

 低価格の海外製バスの需要も高まっている。韓国・現代自動車ジャパンは観光バス「ユニバース」を輸入販売しており、2014年に79台を販売した。2015年は100台を超える過去最高の販売台数になる見通しだ。

 2015年1~6月の外国人観光客は913万人と、前年同期比146%と大幅な伸びをみせた。さらに、国土交通省がバス事業者の収益改善に向けて2014年から観光バスの運賃を改正したことも観光バス事業にとってフォローの風となっている。

 ただ、2020年の東京オリンピック開催以降も国内観光バス需要が伸びるかどうかは不透明。そのため、国内商用車トラック&バス大手も本格的な工場増設などには踏み切れていない。当面、観光バスの需給逼迫は避けられない模様だ。

 この2020年までの大型バス需要を好機とみて、メルセデス・ベンツやルノー、ボルボなどの欧州勢が積極的に日本市場を狙っている。(編集担当:吉田恒)