矢野経済研究所では、次の調査要綱にて国内の葬祭(フューネラル)ビジネス市場の調査を実施した。厚生労働省によると人口構成の変化により死亡者数は年々増加しているものの、葬儀規模の縮小や参入事業者間の価格競争の影響により、2013年の国内の葬祭(フューネラル)ビジネス市場規模(事業者売上金額ベース)は、前年比0.3%増の1兆7,593億2,100万円となった。
葬祭(フューネラル)ビジネス市場は、法的規制がなく、特に初期投資を必要としないことから新規参入が比較的容易であるため、ビジネスへの新規参入が全国規模で進んでいるという。これまで同市場では、冠婚葬祭互助会や専門葬儀事業者が数多く存在していたが、近年は、流通小売業、鉄道業、JA(農業協同組合)、生活協同組合などの異業種企業・団体の参入が活発化している。これら新規参入事業者の増加によって参入事業者間の競争が激化した結果、葬儀費用の低価格化と支払方法の多様化(ローンや分割払い等)が進展していると考えるとしている。
また、ライフタイルの多様化や核家族化の進展等によって、葬儀のスタイルが多様化している。現在では、従来型の一般葬(出席者の範囲がより広い伝統的な葬儀)に加え、家族葬(通夜と告別式は行うが出席するのは家族や親しい親族とごく少数の故人の友人だけという内輪だけの葬儀)、直葬(通夜も告別式もせず火葬と遺骨の引き取りのみを行う葬儀)、樹木葬(遺骨の周辺にある樹木を墓標として故人を弔う葬儀)、散骨(粉末化した遺骨を海上や山林に撒く葬儀)など、様々なスタイルの葬儀が行われているが、葬儀会館で実施する小規模な「家族葬」の需要が高まっているという。
葬祭(フューネラル)ビジネス市場は、高齢者の増加によって死亡者数は増加していること、また今後も新規参入事業者が増えていくことから、競争は一層激化するとみられる。また、葬儀会館数が飽和状態になりつつあること、既存の企業・団体も営業エリアの拡大を進めていることなどで、市場環境は一層厳しいものになっている。
その様なビジネス環境下で、各社とも差別化や地域密着化を図ろうとしているが、類似的なサービスも多く、自社の特徴を打ち出すことが難しくなっている。会員制度に関しても、カード等を発行し囲い込みを進めているが、提携と葬儀利用の強化にまで繋がっているとは言い切れず課題も多い、としている。(編集担当:慶尾六郎)