【今週の展望】遠くの2万円よりも近くの需給バランスの修復

2015年09月06日 20:24

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日経平均は2万円台ワールドから17000~18000円台ワールドに「プチ・パラダイムシフト」した。状況に合わせて、頭を切り換える時。

 これらの数字が意味するのは「売っても売っても、売り圧力は全然衰えない」という不気味な状況である。これでは「日銀砲」のような公的資金の買い支えは入っても本格的な押し目買いは入らず、「日経平均225種のPERは14倍台まで下がった」と〃お買い得感〃を強調しても、むなしく響くだけ。

 このように需給バランスが非常に悪いまま、今週はメジャーSQ週に突入する。SQ週の火曜日、水曜日は「鬼門」で、ましてや9月はメジャーSQだが、8月後半からシケが続いてほとんど「毎日が鬼門」と化しているので、あまり目立たないかもしれない。それでも今週、期先へのロールオーバーが進まずにメジャー級の「需給の台風」が吹き荒れたとしても、需給バランスの修復に伴うその痛みを我慢すれば、来週は「台風一過の需給の秋晴れ」が期待できるだろう。

 次はファンダメンタルズ。7日はNY市場は休場で上海市場が再開する。8日の貿易収支、10日のCPI、PPIなど中国のマクロ経済指標の発表が多いので、今週も上海市場のアップダウンに影響される週になりそうだ。ただ、9日のアップルの新製品発表会の評判が良ければ、8月からボロボロ下落してきた電子部品関連銘柄が持ち直し、それが主要銘柄の浮上のきっかけになるかもしれない。

 前週末4日の日経平均終値17792.16円のテクニカル・ポジションを確認しておくと、移動平均線は全て上にあり、近いほうから5日線18225円、200日線19074円、25日線19621円、75日線20137円。相変わらず「層序」が乱されたまま、下向きで〃下界〃に向かっている。日足一目均衡表の「雲」は20033~20225円で、今週は下値が20033円のまま固定され上限は20187~20213円にあり、まさに「2万円台ワールド」に置き去りにされた格好。当分の間は〃下界〃に何の影響を及ぼさず〃宇宙空間〃に浮かんだままか。ボリンジャーバンドは25日線-1σ(18254円)と-2σ(17426円)の間にある。

 オシレーター系指標は、騰落レシオは72.9、サイコロジカルラインは4勝8敗で33.3%、RSI(相対力指数)は25.0で売られすぎに達していないが、-63.6のRCI(順位相関指数)、20.3のストキャスティクス(9日・Fast/%D)、28.9のボリュームレシオは、いずれも売られすぎラインを下回った。25日移動平均乖離率に至っては-10.3%で、売られすぎラインの-5%をダブルスコアで下回っている。しかし、8月21、24日のプチ・パラダイムシフトからまだ2週間しか経っておらず25日線は「2万円ワールド」の影をまだ引きずっているので、ただちに大きく反発できると解釈しないほうがいい。少なくとも今週は「我慢の週」を強いられるからだ。

 その下値のメドとしてはやはり、ボリンジャーバンドの25日線-2σの17426円が一つのメド。ザラ場で17000円に迫る下落をみせても、終値では戻せるとみる。上限のほうは5日線の18225円と25日線-1σの18254円がメドになりそうだ。前週も2~4日のザラ場高値は18312~18481円だったので、1日でそこまで戻せる可能性はあると思われる。

 ということで、今週も日々のボラティリティは大きく、日経平均終値の変動レンジは17400~18250円とみる。

 毎日毎日、後場になったら判で押したように坂道をゴロゴロ転がるような下落に見舞われ、「9月になれば風向きも変わるだろう」という淡い期待がもろくも打ち砕かれた前週だったが、投資家は手痛い経験と引き換えに多かれ少なかれ「経験知」を得ているはず。自らの経験から得る知識と、情報から得る知識では、やはり違いがある。

 言語を介した「他人が経験した情報の共有」は、現生人類(ホモ・サピエンス)と絶滅した化石人類の運命を分けた要因だと言われることもあるが、それでも情報知は、身をもって知った経験知にはかなわない。いつか、その経験知が役に立つ時がくる。「人間は自分たちの経験したことについての情報をプールし合うことはできるが、それはあくまで情報であって、経験そのものではない」(オルダス・ハックスレー『知覚の扉』河村錠一郎訳)(編集担当:寺尾淳)