日経平均の4ケタ上昇は2008年10月14日以来ほぼ7年ぶり。1343円高という上昇幅は21年7ヵ月ぶりで、上昇幅は史上6位、上昇率7.71%は史上9位の「快挙」。それでも終値の史上最高記録はこの日の約2倍もある2676円高で、上には上がある。東西ドイツ再統一前日の1990年10月2日、橋本龍太郎蔵相(当時)が株価対策を発表した政策要因で、2ヵ月前のイラクのクウェート侵攻後、低迷していた株価が急反発した。2008年10月14日もリーマンショックによる経済混乱の収拾を図ったG20財務相・中央銀行総裁会議直後で、これも政策要因。しかしこの日の「異常な上昇」の原因は政策要因ではなく、8日時点で41.2%の過去最高水準のカラ売り比率が背景の「踏み上げ(売り方の買い戻し)」の気配が濃厚だった。さらに、「鬼門」のSQ週の水曜日に超大幅上昇を実現したことは、11日のSQ清算値を何が何でもリフトアップしたいという「意志」も、その背景に見え隠れする。
日経平均終値は1343.43円高の18770.51円、TOPIX終値は+90.66の1507.37。売買高は27億株、売買代金は3兆1483億円で終盤に3兆円に乗せていた。値上がり銘柄数は1877、値下がり銘柄数はわずかに14。全33業種がプラスで、上位は医薬品、保険、その他金融、証券、ゴム製品、非鉄金属など。下位は水産・農林、鉄鋼、機械、鉱業、海運、空運などだった。
10日の日経平均は大幅反落。東京、上海の大幅高を受けてヨーロッパ市場は揃って3日続伸。しかしNYダウは239ドル安。午前中は高かったが、7月の雇用動向調査の非農業部門求人数が6月比43万人増の575万人で、市場予測の529万人を大きく上回って2000年の調査開始以来の過去最高を記録し、9月利上げ観測を補強したことと原油先物価格の低下により、午後はマイナスに転じた。アメリカはほぼ完全雇用状態で、賃金上昇圧力によるインフレの懸念がくすぶる。リスクオン基調は続き金先物は大幅安。為替のドル円は一時121円台まで円安が進んだが10日朝方は120円台半ば、ユーロ円は135円台前半。円安を受けて日経平均先物の大証夜間取引は18580円で引けたが、CME先物清算値は18215円と抑えられた。
取引時間前に発表された7月の機械受注統計は前月比3.6%減で、市場予測の3.7%増を大きく裏切った。基調判断は「持ち直している」から「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に変更。GDPの内訳もそうだったが、設備投資は今や日本経済の急所。8月の企業物価指数(PPI)は市場予測の3.3%減よりも悪い3.6%減で、これでは日銀のインフレ誘導政策のゴールは遠い。
国内経済指標が悪化する中、1343円の超大幅上昇明けでどこまで反落するか心配がある日経平均は351円安の18418円で始まる。TOPIXも大幅安。売り気配の銘柄に値がつくにつれて下落。一度は持ち直しても午前10時を回るとさらに下落し、利益確定売りで前日上昇分の「半値下げ」の672円安も、18000円も割り込み、10時27分に814円安の17956円まで下げる。ドル円は120円を割った。上海市場が始まる10時30分に中国で8月の経済指標が2本発表された。消費者物価指数(CPI)は+2.0%で市場予測の+1.8%を上回ったが、工業生産者出荷価格指数(PPI)は-5.9%で市場予測の-5.6%より悪かった。上海総合指数は1%を超えるマイナスで始まったが、徐々に下げ幅を圧縮していく。日経平均もそれに歩調を合わせ下げ幅を圧縮するが、18300円には届かない。11時に発表された7月の産業機械受注額は前年同月比 57%の大幅減で4カ月連続マイナス。設備投資はやっぱり悪く、労働分配率も高まらず企業の内部留保に回っている。8月の東京都心部オフィス空室率は7月末比-0.17ポイントの4.72%で4カ月連続で低下し、6年8カ月ぶりの低水準とこちらは好調だった。11時台の日経平均は18200円台で推移し、前引けは535円安の18234円だった。
黒田日銀総裁は参議院財政金融委員会に出席し、7~9月期の実質GDP成長率について「毎月の各種統計を見る限りプラスになる可能性が高い」と発言した。午前中の上海市場はずっとマイナスで、-0.96%で昼休みに入った。後場、日経平均はほぼ前引け水準で再開すると午後0時台は18300円にたびたびタッチ。しかし1時を過ぎると徐々に下げ幅を拡大し、18200円だけでなく18100円も一時割り込んだ。1時50分頃、自民党の山本幸三衆議院議員が「追加緩和は10月30日が適当」と発言してドル円レートが80銭ほど円安に振れ、日経平均も18300円にタッチしてアッという間に元に戻る出来事があった。大蔵省(財務省)出身の山本代議士は4月にも同様の発言をしているが、ほどほどにしないと「オオカミ少年」になりかねない。上海市場の午後の取引はマイナスで始まるが下げ幅を徐々に圧縮する動き。2時台は18200円台で落ち着き、18300円も何度かタッチするが終盤まで500円前後のマイナスには変わりない。大雨で茨城県の鬼怒川の堤防が決壊して甚大な被害が生じ、復興需要が想定されて建設関連銘柄に買いが集まる。日経平均は最後まで18300円にタッチして470円安の18299円で、前日の上昇幅の約35%にあたる大幅な反落を喫した。日中値幅は464円。TOPIXの下げ幅は-1.85%で日経平均の-2.51%より小さかった。上海総合指数は結局プラスに戻れず-1.39%で終了した。