使っていないモノやサービスを個人同士で貸し借りするシェアリングエコノミー。アメリカでは2000年代からじわじわと普及が始まり、特にここ数年、市場は急速に拡大を続けている。背景にあるのは次々に誕生する会員制専用サイトの出現と、実名での登録が義務付けられているfacebook等ソーシャル・ネットワーキング・サービスの存在だ。以前は、企業や公の機関が担ってきた個人の信用を事実上ソーシャル・ネットワーキング・サービスが担えるようになり、持ち主が利用者を自分で審査できるという安心感から利用者数を伸ばしている。シェアリングエコノミーの市場は、今後巨大な市場になると期待されている。
日本でも10年ごろよりシェアリングエコノミーが普及しはじめ、今年の春、安倍総理がシリコンバレーを訪れた際にライドシェアー(自動車の相乗り)を体験し、それが6月30日のシェアリングエコノミーを実現するための法整備の見直しについての宣言につながったとされている。
矢野経済研究所のまとめによると、シェアリングエコノミーのメリットは、利用者が乗り物・スペース・モノ・ヒト・カネを必要な時にだけ安価に活用することができ、持ち主は遊休資産をサービスとして提供することで収益を得ることができる。そして物の共有により社会全体のエコロジー化にもつながるとしている。
このようなメリットはあるが、依然として課題もある。その一つ、利用者に対する信頼性の担保が挙げられる。知らない人と物を共有しなければならないことに対して不安を抱いている人は多い。アメリカのシェアハウス会員制サイト「Airbnb」では、信頼が鍵としソーシャルネットワークと接続し個人情報の確認を取れるようにしている。利用者はそこからプロフィールを見てその人の背景を知り、友達や投稿の内容から人となりを見ることができる。
他にも心理面の問題もある。世代によっては、物の貸し借りで発生するトラブルを避けたいと貸すことに対して消極的である。一方、普及のためには利用者が品質の良い物を借りられることも重要である。貸し借りの際にトラブルが発生した場合、どのように保障していくかの整備が必要と言えそうだ。
さらに日本では法的な問題がある。一般の人が運賃を取って人を乗せることを禁止した白タク規制や、人を宿泊させる際には営業許可が必要であるなど規制を、今後、どうやって取り除いていくかが課題であるが、こちらについては改善の兆しがあった。15年度は国家戦略特別区域における旅館業法の特例が施行され、条例が制定された地域の一定条件を満たした個人宅であれば宿泊施設として利用が可能になる。
これにより訪日する外国人観光客にとってホテルか個人の家に宿泊するかという選択肢が増えることになるであろう。個人の家に泊まりオーナーとコミュニケーションを楽しみつつ日本の文化に触れる、今後、外国人観光客にとって魅力的なソフトになり得るのではないだろうか?(編集担当:久保田雄城)