2014年度の国内社会インフラ向けIT市場は前年度比6.2%増の4,831億円となった。矢野経済研究所では、国内の社会インフラ向けIT市場の調査を実施した。調査期間は2015年1月~7月調査対象は、官公庁(国土交通省、経済産業省、総務省等)、公的機関(産業技術総合研究所、土木研究所、国土技術総合研究所、各種業界団体)、IT 事業者/SIer(システムインテグレーター)、通信事業者、建設事業者、重電メーカー、建設コンサルト業など。調査方法:当社専門研究員による文献検索/文献調査、直接面接調査、電話調査を併用した。
この調査での社会インフラ向け IT 市場とは、道路、警察、鉄道、港湾、空港などの交通関連、上下水道/浄水場/排水処理などの水関連、治水・砂防などの河川/ダム関連、防災関連等の社会インフラ分野における IT 需要を対象とした。市場規模には、ハードウェア、ソフトウェア、SI、コンサルティング、通信回線利用料、サービスサポート、保守メンテナンス、要員派遣などを含み、インフラ運営事業者の発注金額ベースで算出した。
それによると、国内の2014年度の社会インフラ向けIT市場規模は、前年度比 6.2%増の4,831億円(インフラ運営事業者の発注金額ベース)と高い伸長であった。これは、東日本大震災後の国土強靭化計画などを追い風とした2012年度からの社会インフラ向け投資の伸びを反映したものとなったとしている。
2020年度までの国内の社会インフラ向けIT市場は、インフラの新規建設自体は伸びを欠くものの、東京オリンピックを控えた首都圏での社会インフラ投資(高速道路、鉄道、空港、防災など)の拡大、リニア新幹線需要のあるJR東海関連プロジェクト、さらにはインフラ長寿命化基本計画に準じたインフラモニタリング業務への IT 導入の可能性などがあり、市場は増減を繰り返しながらも需要は堅調な見通しであるとした。そして、2020年度での国内の社会インフラ向けIT市場規模は4,670億円(インフラ運営事業者の発注金額ベース)と予測した。
今後の社会インフラにおける IT 需要を展望すると、多くのカテゴリーで社会インフラ向けIT需要が高まる見通しであるという。しかし、新規のインフラ建設自体が鈍化する流れの中で、2023年頃以降には、国内での社会インフラ向け IT 需要も縮小傾向に転じると予測している。(編集担当:慶尾六郎)