ニッカウヰスキー余市蒸溜所および宮城峡蒸溜所の蒸溜所見学が人気で、本年の見学者数の累計は、10月5日の時点で、余市蒸溜所が74万3000人、宮城峡蒸溜所が25万7000人となり、ふたつの蒸溜所合計で100万人を達成した。これはニッカウヰスキーが余市蒸溜所でウイスキーの製造を始めた1934年以降、初の記録となる。
ニッカウヰスキーのブランドイメージは、昨年秋からNHKで放送された朝の連続テレビ小説(通称:朝ドラ)「マッサン」で急速に高まった。ドラマはニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝と、その政孝を支えるスコットランド人の妻・リタの物語で、NHKの朝ドラとしても驚異的なヒット作となった。
1934年にウイスキーの蒸溜を始めた余市蒸溜所はとくに人気が高く、「トリップ・アドバイザー」ランキングで昨年“日本の社会科見学&工場見学”の1位を獲得したほどだ。
ニッカ余市蒸溜所の敷地はとても広い。日本初のウイスキー蒸溜所であるサントリー山崎蒸溜所の数倍はある。しかも、その姿は美しくフォトジェニックですらある。また敷地内には、他の蒸溜所では見られない建物を目にすることができる。そのひとつは、余市町の有形遺産でもある蒸溜所の事務所棟、そしてリタ・ハウスと呼ばれるかつての研究所などの独立した建物だ。そして、異彩を放っているのが、旧竹鶴邸だ。創業者竹鶴政孝氏が夫人リタ(政孝がスコットランド留学中に出会い、結婚。政孝のウイスキーづくりの夢を支え続けた)とともに住んでいた余市町の郊外山田町の住居を2002年12月に蒸溜所内に移築、復元した建物である。
スコットランドから嫁いできたリタ夫人のために建てたといわれる洋館は、和洋折衷の間取りや様式を取り入れた住宅で、随所に夫人への思いやりが感じられる住居で、この3月に終了したNHK朝のテレビ小説「マッサン」の収録スタジオに再現されていた建物だ。
一方、1969年に創業したニッカ第2の蒸溜所である宮城峡は、仙台市のはずれ、広瀬川と新川川(にっかわがわ)が合流する、豊かな自然に囲まれた場所にある。「2ヵ所以上の違った土地でできるモルト原酒をブレンドすることがウイスキーづくりの理想」と考えていた竹鶴政孝は第2の蒸溜所を求めた。当時、余市蒸溜所の工場長ら数人が宮城や岩手などの川という川に沿って適地を探したが、見つからない。やがて広瀬川と新川川の合流点までたどり着き、奥へ進んでいくと、視界が開けた。
ここにたどり着いた竹鶴政孝は、川原に下りて川の水を飲んでみた。「ここだ!」という確信が湧き上がる。グラスにウイスキーを入れ、川の水を汲んでつくった水割りを飲むと「実に素晴らしい水だ。ここに決めよう!」と叫んだという。
ニッカの蒸溜所見学の人気は2014年から急速に高まっており、昨年は余市蒸溜所が46万7000人(前年比165%)、宮城峡蒸溜所20万3000人(同127%)だった。2015年の入場者数は余市80万人超、宮城峡30万人超と見込んでおり、それぞれの蒸溜所では来場者に向けて記念イベントを予定しているという。(編集担当:吉田恒)