10月5日、公益財団法人世界自然保護基金(WWF)は、ヒマラヤ東部で新種の生き物211種を確認したと発表。これは、09年から5年間でネパール、ブータン、およびインド北東部を含めたヒマラヤ山脈の東部を中心に発見された新種の野生生物の数である。
10月5日、公益財団法人世界自然保護基金(WWF)は、ヒマラヤ東部で新種の生き物211種を確認したと発表。これは、2009年から5年間でネパール、ブータン、およびインド北東部を含めたヒマラヤ山脈の東部を中心に発見された新種の野生生物の数である。WWFは報告書の中で、北ミャンマーからチベット南部で、生態系が深刻な脅威に直面していると指摘している。そして、原因となっている気候変動をはじめ、さまざまな環境問題に早急に取り組むべきだと訴えた。
「世界の屋根」と称されるヒマラヤ山脈は、世界最高峰のエベレストをはじめ、8,000メートル級の峰々をいただく。その広大な山麓の自然は、多くの野生生物が息づく生物多様性の宝庫である。そこには少なくとも1万種の植物、300種の哺乳類、977種の鳥類、176種の爬虫類、105種の両生類と269種の淡水魚が生息するといわれてきた。これに加えさらに1998年から2008年の10年間に発見された新種は、少なくとも354種。09年から14年までの間には、211種が発見された。今回WWFが発表した211種の内訳は、植物133種、無脊椎動物（昆虫類37種含む）39種、魚類26種であった。この他にも、両生類10種、哺乳類、鳥類、爬虫類がそれぞれ1種ずつである。これで98年以降、合計565種にものぼる新種が発見されたことになる。
発見された生きものの中には、最大4日、水から出ても生きられる淡水魚や、鮮やかな黄色と赤、オレンジの模様を持つヘビ、体色は地味ながら空色の目を持つカエルなど、印象的な姿のものが少なくない。これらは、いずれも生息地一帯のみに生きる固有種であり、中には個体数が少なく絶滅の危機が心配されるものも含まれる。
その理由は、地域の人口増加と、それに伴う森林伐採や過剰な放牧、鉱山開発や、汚染、水力発電開発、さらに野生生物の密猟や違法取引も起きている。しかし、最も深刻な影響として指摘されるのは、気候変動（地球温暖化）である。
これら全ての要因が、微妙なバランスの上に成り立っているヒマラヤ生態系に負荷をかけ、今後それがさらに強まると考えられている。WWFの報告書は、開発の結果、ヒマラヤ東部に残る本来の自然の景観は全体の25％に過ぎないと指摘し、そこに生息する数百種の野生生物が絶滅の危機さらされていると訴えている。
現在、われわれの住む地球では、この地域だけでなく自然とそこに住む野生生物が非常に速いスピードで失われ続けている。私たちは、経済の発展だけを優先するのではなく持続可能な社会のための開発を目指すべきである。言うまでも無いことであるが、失われてしまえば自然も、滅んだ生物の遺伝子情報も、もう二度とわれわれの手に戻らないのであるから。（編集担当：久保田雄城）
