TPPで日本農業は一大転機・消える兼業

2015年10月17日 11:57

画・食糧自給率の目標を引き下け_-助成型農業から「稼く_農業」へ

TPP大筋合意で、日本経済団体が求めるTPPは大きく前進した。そして、その先に見えるのは、日本経済団体が求める企業の農業参入の道の拡大、農業経営、農産物加工品の海外輸出。あわせて、農地の集約化の促進だ

 「TPPで野菜、魚などすべての関税が16年目までに撤廃されることが分かった」と毎日新聞が17日、朝刊で報じた。撤廃品目数は農林水産物834品目の約半数に達するという。

 安倍総理はこうした事実を語ることなく「我が国の農業を『守りの農業』から『攻めの農業』に転換するチャンスに」とTPP大筋合意を発表し、裏では、この事実に基づき、国内農業、水産業に甚大な影響を及ぼすことを分かっているがゆえに、大筋合意後に「すべての閣僚をメンバーとするTPP総合対策本部」を立ち上げた。

 国内農業や水産業を世界市場に放り出し、大海で生き残る農業力や水産漁業力を身に付けることが日本の農水産業に必要だと言いたいのだろう。政府・与党がどのような対策を打ち出すのか、つぶさに見ていく必要がある。

 臨時国会回避が、こうしたTPPへの野党からの集中砲火や安保法案での参院安保特別委員会での強行採決、聴取不能の中での議事録問題、新閣僚のカネにまつわるスキャンダル追及から逃れるための対応と言われかねない状況になりつつある。総理の外交日程から臨時国会は開けないといえるような「課題」ではない。政府・与党は、臨時国会で腰を据えた議論をすることが必要だろう。

 安倍内閣発足当初から、国内においての聖域なき規制緩和への推進指示、労働法制のさらなる見直し方針、岩盤規制を打ち破り、世界で最も企業の活動しやすい環境づくりが、総理の強力な意向で突き進んでいる。

 安倍政権の政策は外交・安全保障はアーミテージ・ナイ・レポートに完全符合する「アメリカ追従」、国内の経済・産業・エネルギー・労働政策は「日本経済団体連合会の提言」に符合する。マスコミは、これまでの2年半の安倍政権下の政策とアーミテージ・ナイ・レポート、日本経済団体連合会の提言を突合させ、一覧にしてほしい。結論がたまたま同じになったと言うかもしれない。その決定過程の検証も必要だろう。

 安倍政権の究極は自由主義、資本主義経済の徹底による『完全な弱肉強食社会』に入り込むのではないか。その危険を感じつつある。資本主義経済の徹底でなく、その歪を正し、弱者に政治の手を差し伸べる修正資本主義の、互いに思いやるこころを大切にする社会構造が崩壊していくのではないか。経済最優先での安倍総理の強者の思考が、皮肉にも、安倍総理が守りたいとする「美しい日本」の国柄さえ大きく変える方向に動いているように思える。

 TPP大筋合意で、日本経済団体が求めるTPPは大きく前進した。そして、その先に見えるのは、日本経済団体が求める企業の農業参入の道の拡大、農業経営、農産物加工品の海外輸出。あわせて、農地の集約化の促進だ。TPPにより、農業に大きなチャンスをつかむのは大手企業になる。

 TPP開始と同時に、ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、ブドウなどの関税は即時撤廃になる。6年目にはタマネギやサクランボなども撤廃に。畑地で細々と栽培し、道の駅などで販売して生活費の一部にあてている高齢者や副収入に蔬菜を栽培する兼業農家の姿は安倍総理の目にはうつらないよう。兼業農家は消滅するしかないとみているように感じられる。日本農業がTPPにより、一大転機を迎えることになることは確かなようだ。(編集担当:森高龍二)