【今週の展望】「好事魔多し」で急落注意報発令の週になる?

2015年11月08日 20:33

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アメリカ雇用統計がビッグサプライズでも、今週は「鬼のSQ週」で上値は限定か。日銀の「ボージョレー・ヌーボー緩和」に期待しつつ、来週まで様子見もありうる。

 海外の経済指標は、ユーロ圏の7~9月期のGDP、アメリカの小売売上高が重要だが、発表が13日なので来週の材料になる。

 9日はアメリカの10月の労働市場情勢指数(LMCI)、10日は中国の10月の消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(工業出荷価格指数/PPI)、アメリカの10月の輸入物価指数、9月の卸売在庫、卸売売上高、11日は中国の10月の小売売上高、工業生産高、1~10月の都市部固定資産投資、不動産開発投資、アメリカの10月の財政収支、12日はユーロ圏の9月の鉱工業生産指数、13日はドイツ、ユーロ圏の7~9月期の国内総生産(GDP)速報値、アメリカの10月の小売売上高、卸売物価指数(PPI)、11月のミシガン大学消費者信頼感指数速報値が、それぞれ発表される。

 9日にユーロ圏財務相会合が開かれる。10日にEUの財務相理事会が開かれる。12日に韓国が政策金利を発表する。15~16日に地中海に面したトルコのリゾート地アンタルヤでG20首脳会議が開かれる。

 アメリカ主要企業の決算は、9日にプライスラインG、10日にD.R.ホートン、11日にメーシーズ、12日にアプライド・マテリアルズ、ノードストロム、コールズ、シスコシステムズ、13日にJCペニーが発表する予定。

 非日常の「まつり(祝祭)」とは、モノもカネも人間のエネルギーも「蕩尽」させるだけの場、なのだろうか? それとも、そこに何か新しいものを生み出せる力が秘められているのだろうか? 今週11日からドイツで始まるヨーロッパの「カーニバル(謝肉祭)」は、たぶん前者だろう。歌って踊って飲み食いして蕩尽した後にはゴミしか残らない。しかし日本の「まつり」は前者の要素もありながら後者に寄っている。「まつり」では、遠方からやって来て村人たちから歓待を受けるさすらいの「まれびと」たちとの出会いがあり、ありふれた日常を営んでいる地域の共同体も、「野生の思考」を持つ彼らとの交流を通じて刺激を受け、そこに新しいものが生まれたり、新しいことが始まったりした。「まれびと」と村の若い男女がカップルになり、村に文字通りの「新しい血」が入ることも、決して珍しくはなかった。

 証券界にとって11月4日の「郵政3社新規上場イベント」とは、ヨーロッパの「カーニバル」ではなく、「まれびと」と出会って刺激を受け、気持ちがリフレッシュし、新しい何かが芽生えるような日本古来の「まつり」だったのかもしれない。ここで言う「まれびと」とは、それまでは株式投資に興味も関心も薄く、どこか遠くの場所にいたニューカマーの個人投資家のことである。彼らは郵政3社の「まつり囃子」の響きに引き寄せられて〃証券村〃へとやってきた。

 彼らは、いきなり〃ギョーカイ〃に染まってデイトレーダーに大変身したりはしない。それどころか、〃村人〃が「わかりきったこと」「今さら人に尋ねるまでもないこと」と置いていったようなプリミティブな問いを発しては、相手をハッとさせる。それこそまさに、〃証券村の村人〃の思考回路には組み込まれていない「野生の思考」だ。野村證券によると郵政3社の上場前、新規口座の開設が通常の2倍のペースで伸びたというが、証券会社の店頭やコールセンターでは、そんな「まれびと」との遭遇で面白いエピソードがいろいろと起きたことだろう。その時の会話記録は貴重なデータになるはずだ。

 ではその「野生の思考」で11月4日、「まれびと」たちはどんな行動をとったのか? その一端を垣間見せてくれたのが、郵政3社の中でかんぽ生命<7181>が最も人気を博し、上場初日にストップ高になったという事実だろう。おそらく「郵政3社で一番つまらない銘柄」と思った〃村人〃は少なくなかったはず。予想年間配当は56円で他の2社の倍以上だが、生命保険会社に「大胆な成長戦略」や「画期的な新商品、新サービス」で株価高騰、短期の利ざや稼ぎを期待するのは酷というもの。「長期安定で配当利回りがいい資産株」は面白味に欠けるだけでなく、証券会社に売買手数料収入をもたらしてくれる回転売買の敵でもある。

 しかもそれは、新規IPO銘柄だ。「新規IPO銘柄を長期保有目的で買う」「新規IPO銘柄を配当利回り目当てで買う」というのは、本来の〃村人〃の思考回路にはなかったはず。新規IPO銘柄の、それも上場直後のセカンダリー市場というのは、もっぱら短期の利食いのためにあるものだからだ。長く持ち続けるのはきわめてリスキーな行為だった。

 そこへ11月4日、新規上場まつり開催中のかんぽ生命株を「すぐ売るために買う」のではなく、福島第一原発事故以前の東京電力<9501>株のように「ずっと持って配当をもらうために買う」集団がやってきた。買うばかりで上がっても売らないから、需給バランスが崩れて株価はストップ高まで吊り上がる。それを想像できた〃証券村の村人〃は、はたしてどれほどいたのだろう。

 とにもかくにも、2日後の6日には郵政3社の株価は全て下落して「まつり」はフィナーレ。ニューカマーの個人投資家は〃証券村〃に新しい風を吹き込んだが、その「まれびと」が村に定着するか、それとも再びさすらいの旅に出てしまうかは、まだわからない。それでも外から新たな刺激とエネルギーを補給して今週以降、東京市場に「サムシング・ニュー」が起きれば、「郵政上場まつり」にもそれなりの意義があったことになる。もし何も変わらないようなら、〃村〃はひたすらジリ貧になっていくだけだろう。

 その今週は、海外要因で高値でスタートしそうだ。6日に発表されたアメリカの雇用統計は、非農業部門雇用者数が市場予測の18万人に対し約1.5倍の27.1万人というビッグサプライズ。失業率も0.1ポイント低下して5.0%だった。イエレンFRB議長がお好きな指標、平均時給も+2.5%。CMEが算出するFF金利を12月に利上げする確率は56%から68%に上がり、長期金利は上昇。ドルが買われ為替のドル円は一気に123円台に乗せた。ドル高円安の急進でCME先物清算値は19460円まではね上がった。