【今週の振り返り】テロに屈しない意気を示し282円上昇した週

2015年11月21日 20:33

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フランスにおける内乱。パリを「破壊しに」とテロリストが言おうと、金融市場連鎖崩壊を食い止める「太平洋の防波堤」になった東京市場。だがごほうびの日経平均2万円は、おあずけ。

 18日の日経平均は小幅続伸。フランスがISのシリアの拠点を報復攻撃する中、ECBの追加緩和期待が出てヨーロッパ市場は全面大幅高。パリCAC指数も4日ぶりに反発した。NYダウは6.49ドル高で小幅続伸。NASDAQは小幅プラス、S&P500はマイナスだった。ガソリン価格が少し上昇し消費者物価指数(CPI)が+0.1%と3ヵ月ぶりにプラスになり市場予測と一致したが、鉱工業生産指数は-0.2%で2ヵ月連続のマイナス。プラスの市場予測を裏切った。序盤のダウは前日終値付近でもみあったが、小売業の8~10月期決算を好感して一時100ドル高を超える。ホームデポの決算は堅調。ウォルマートの決算は減収減益でもEPS(1株あたり利益)は市場予測を上回った。しかし終盤は翌日のFOMC議事要旨公表待ちの様子見が出て下落し、かろうじてプラスで終えた。原油先物は反落して3ヵ月ぶりの安値。金先物は大幅反落したが理由は地政学的リスクの後退ではなく利上げ懸念。為替のドル円は123円台前半、ユーロ円は131円台前半。CME先物清算値は19815円だった。

 前日、自民党の農林部会は20日に安倍内閣に申し入れるTPP対策の農業政策をまとめていた。日経平均は141円高の19771円で始まる。TOPIXは1595でスタート。すぐに19800円台に乗せ、午前9時7分に19840円まで上昇するが、序盤はそこまで。日銀会合が始まるので金融、不動産セクターに妙な買いが入るが、全体的には翌日の結果待ちで薄商い。TOPIXはあと0.8ポイントで1600の大台に届かない。9時台後半には19800円を割るが、10時台前半は19800円にピタリと張りついた小動き。上海市場はプラスで始まるもののいきなり急落し、どんどん下げていくが日経平均は連れ安する気配もなく、もうすでに「他人の関係」か? 為替のドル円も動かない。10時台後半には逆に19820円近くまで上昇する。それでも11時台には19800円を割り込み、前引けは155円高の19785円。TOPIXは始値より少し高いだけ。

 上海市場は小幅だがプラスに浮上して午前中の取引を終えていた。後場の日経平均はほぼ前引け水準で再開する。ところが下落し19750円も一時割って午後0時42分に19746円まで下げる。小幅なのでゲリラ急落というよりもプチ波乱。しかし1時台はプチで終わらず、先物売り先行でズルズル下げて19700円も割り込む。為替のドル円も円高進行。ワシントンDC、LA発のパリ行きエールフランス機2機が緊急着陸したニュース、「パリ郊外で警官と銃撃戦」というニュースが入って地政学的リスクが再燃し、大幅上昇で利益確定売りが入りやすい神経質な地合いが直撃された。もっとも、エールフランスの件は言うのはタダの爆破予告の電話だけ。この時、東京で売りを仕掛けたのがもしフランス系の裁定業者だったら「こことよそHere and there/Ici et ailleurs」で話は別なのだろうか? 日経平均は1時33分の19669円で下げ止まりマイナスにはならないが、前日比上昇幅が50円ほどに圧縮される。

 2時に再開した上海市場はプラスからマイナスに変わり、さらに下落。日経平均は19670円、TOPIXは1588がサポートラインになり底堅くプラスを維持していたが、2時台後半になると為替の円高進行に加え上海の下落圧力にも耐えられなくなり、2時32分に19643円まで下げる。前日終値より13円高いだけ。マーケットは「起こってしまったこと」より、「起こるかもしれないこと」のほうを不安がる。ドンパチが始まってしまえば湾岸戦争は1004円高、イラク戦争は144円高で、米軍圧勝の結果を織り込んで日経平均は上昇していた。終盤は19670円を超えても19700円には届かず、最後は19650円を割り込んで安値圏で大引け。2日続けてローソク足は黒(陰線)。TOPIXは微小な上昇。19800円台のCME先物とは裏腹に19700円の壁を突破できず「続伸はしたけれど」というモヤモヤした終わり方。上海総合指数は終盤プラスの時間帯もあったが1.00%安で終えた。

 日経平均終値は18.55円高の19649.18円、TOPIX終値は+0.42の1586.53。売買高は19億株で20億株割れの薄商い。売買代金は2兆2523億円。値上がり銘柄数797よりも値下がり銘柄数980のほうが多い。プラスのセクターは17業種で上位はその他金融、不動産、非鉄金属、陸運、サービス、医薬品など。マイナスのセクターは16業種で下位は損保大手が4~9月期決算を発表した保険を筆頭に電気・ガス、鉱業、精密機器、石油・石炭、繊維などだった。

 19日の日経平均は大幅に3日続伸。前日のパリ郊外サン・ドニでのテロリスト対警官隊の「フランスにおける内乱」は、爆弾が何度も炸裂して人家はハチの巣と化し、リアルな市街戦は、まぼろしに非ず。それを目の当たりにしたヨーロッパ市場はフランス、ドイツが反落しまちまちだったが、NYダウは247ドル高で大幅3日続伸。NASDAQもS&P500も大幅上昇。10月の住宅着工件数は-11%で7ヵ月ぶりの低水準で市場予測を下回ったが、先行指標の住宅着工許可件数は+4.1%で市場予測を上回り、マーケットはそっちを選択してダウはプラスで始まった。小売業のターゲットの決算は増収増益でEPSは市場予測と一致していた。

 注目の10月のFOMCの議事要旨は、リッチモンド連銀のラッカー総裁が0.25%の利上げを提案したが、多数決でゼロ金利維持を決めたと判明。もっとも、メンバーの大半はこのまま経済情勢が予想通り進展すれば12月のFOMCで「政策金利の正常化プロセス」を開始する条件が整うとみていた。12月の利上げを後押しする内容で本来なら株価には下げ要因だが、「その後の利上げペースは緩やかになる」というニュアンスもあり、ダウは逆に上昇にドライブがかかった。アトランタ連銀のロックハート総裁は「12月利上げは問題なし」と強調。クリーブランド連銀のメスター総裁も同調した。12月利上げは世界の総意。原油先物価格は一時40ドルを割ったが結局小幅高。金先物価格も小幅高。議事要旨発表後に長期金利が上昇して為替市場ではドルが買われ、ドル円は123円台半ば、ユーロ円は131円台後半。CME先物清算値は19940円で2万円まであとわずか60円。日経平均の2万円回復も世界の総意だが、東京市場はザラ場中になんだかんだとケチがつき、終値は19700円にもまだ到達していない。