照明器具の市場において、今やすっかり定着したLED。国内ではとくに、東日本大震災後の節電対策のひとつとして需要が急増し、ベースライトまでLED化が進んだことから、日本は世界でもトップクラスのLED普及先進国となった。
富士経済の調べによると、照明器具の2012年度の世界市場だけでも全体で5.4兆円。LEDはその2割程度を占めるに過ぎなかったが、その後拡大を続けており、東京オリンピックが開催される2020年には10兆円に達し、LEDは5割強の比率に成長するとみられている。とくに中国やASEAN諸国をはじめとするアジア各国への普及が期待されており、パナソニック<6752>がアジア諸国でのLED照明販売の本格化を発表するなど、日本企業も積極的な世界市場への展開をみせはじめている。今後は照明用のみならず、自動車や産業機器などの分野でもLED化が進むだろう。
しかし、一つ問題がある。それは他の製品同様、中国メーカーなどの台頭による安価な製品の導入が、この市場でもすでに始まっていることだ。完成品のみならず、部品や材料に至るまで、安価な製品が出回っている。こういった製品は、価格競争を生み、価格の下落を招く。LED市場を爆発的に拡げるトリガーになる可能性を秘めてはいるものの、安かろう悪かろうになってしまえば、逆にブレーキをかけかねない諸刃の剣でもある。
このような状況の中、ローム株式会社<6963>は11月20日、車載機器や産業機器、民生機器の表示パネルに最適な単ランク対応1608サイズの高光度チップLED「SML-D15シリーズ」を発表した。同シリーズの最大の特長は、素子製造の段階から徹底した作り込みをしたことで、LEDの課題であった光度バラツキの大幅な低減と、光度の安定化に成功した点だ。
LEDは一般的に、製造過程において多少の光度バラツキが出てしまうことが宿命のようにいわれている。これを抑制するためには、納入できる光度ランクを選別したり、その光度ランクに合わせて自ら抵抗器で調整をする必要があった。しかし、今回ロームが開発した「SML-D15シリーズ」は、従来比1/4の光度バラツキで、設計負荷の軽減とアプリケーションの性能向上に貢献する。メーターパネルやカーナビゲーションなどの車載機器や産業機器など、アプリケーションの性能向上のために、光度のバラツキ低減に対する要求がとくに大きい分野での需要が期待されている。
LEDの市場は発展途上にあり、今後、巨大市場に成長するのは間違いないだろう。しかし日本は、目先の利益とシェアに惑わされて価格競争に加わるのではなく、質で勝負すべきであろう。今回のロームが発表した高光度チップLEDのように、メイドインジャパンの真価は「価格」ではなく「価値」にあるのだから。(編集担当:松田渡)