JRの発表によると、年末年始(12月25日~2016年1月5日)の新幹線と在来線の指定座席予約数は12月10日時点で前年比3%増の375万席となった。11月に発生したフランス・パリの同時多発テロ事件の影響などで、年末年始の海外旅行が自粛ムードに傾いていることが、国内旅行の需要を伸ばしているとみられる。
中でも、15年春に金沢・富山〜長野間が開業した北陸新幹線は、予約数28万1000席と、長野駅までしか開通していなかった前年の2.6倍増となった。また、JR東海<9022>によると、帰省ピークとなる1月3日の指定席の予約がすでに満席で、予約数は過去最多の輸送人員だった15年1月4日」と比べて1割も上回るという。
新幹線といえば、先般、インドの高速鉄道敷設に日本の「新幹線システム」が導入されたことが記憶に新しい。「新幹線システム」の輸出は2007年に開業した台湾新幹線以来、2例目となる。
インドの鉄道は、全長が約6万6千キロ。アメリカ、ロシア、中国に次ぐ世界第4位の営業距離を誇るが、近代化が大幅に遅れていた。中でも、高速鉄道の敷設が切望されていた。今回、インド西部の主要都市ムンバイと北西部の都市アーメダバード間、約500キロにおける高速鉄道敷設について、日本の新幹線システムが導入されることが決まった。
インドの高速鉄道計画は、その獲得にむけて、フランスや中国とも競合していた。最終的に日本が採択された理由は何だろうか?
日本の新幹線システムが選ばれた理由として、日印首脳間の信頼関係や、異例ともいえる約1兆4600億円もの円借款を提供したことなどが挙げられるが、一番の理由はやはり、世界一と称される日本の鉄道技術ではないだろうか。
例えば、輸送用機器の部品製造を行う古山精機は、0系車両の時代から最新のN700系車両に至るまで、JR東海の指定工場として、制動系統装置部品や車軸潤滑装置部品、客室の揺れを最大限に抑えるための懸架装置部品などの精密研削加工を行っている。超高速で走行している車内で、むしろ在来線などよりも揺れが少ないのは同社の高い技術力によるものだ。
また、車内の快適さを保つためには鉄道車両用防振ゴムの存在を忘れてはいけない。これは、自動車の防振ゴムでも世界的に大きなシェアをもつ住友理工<5191>が担当している。防振ゴムが路面からの振動を大幅に軽減してくれるおかげで、揺れも少なく、振動音も少ない車内環境が成り立っているのだ。
今回の敷設はインドの高速鉄道構想の一部に過ぎない。これが成功すれば、巨大な鉄道網と人口を抱えるインドでの需要がさらに拡大する可能性が高まる。さらに今後、発展が見込まれているアジア諸国などでも、高速鉄道が実現すれば、日本のインフラ輸出にとって、大きなチャンスとなるだろう。(編集担当:藤原伊織)