観光庁は寺社仏閣や庭園などで国際会議を開催する機会を増やすため、主催者に開催費用の補助をする。国の文化や歴史をうかがいしれる施設は海外では「ユニークべニュー」とよばれ、イベント開催場として人気がある。
政府観光局によれば、今年1月の訪日外国人旅行者は185万1800万人を記録し、前年同時期より63万人以上増加したという。政府は去年から観光客誘致に本腰を入れ始め、この短期間で大幅増の結果を出したわけだが、今後は観光とはまた違った側面を持つMICEにも力を入れていきたいとしている。このMICEとは会議(Meeting)、企業等の研修旅行(Incentive Travel)、学会などの国際会議(Convention)、展示会・イベント(Exhibition/Event)のこと指す。
政府はこれらMICEの持つ世界レベルでの知識の交換、人の交流、経済効果など、観光以外の大きなメリットをより多く取り込むため、MICEに該当するイベントの開催誘致政策を強化することを決定した。その一環として、今回新たに発表されたのは政府によるイベント主催者への開催費用の援助だ。日本の歴史や文化などがうかがい知れる寺社仏閣や庭園、博物館や美術館等でイベントを開催する主催者に最大100万円の費用援助をする制度が創設されるという。
このような特徴のある施設は「ユニークべニュー」と呼ばれ、開催施設に注目が集まるので多くの外国人の訪日が期待できる。長い歴史と文化的施設が全国各地に存在する日本は必然的にこのユニークべニューを多く擁することになり、こうした施策に期待がかかるのは自然な見方だ。
すでに観光庁ではユニークべニューとして活用可能な施設のリストを公表しており、その中には宮城県の旧伊達邸鍾景閣、東京都の東京都国立博物館や江戸東京博物館、神奈川県の横浜能楽堂や三渓園、福岡県の九州国立博物館など、多くの施設が挙げられている。観光庁は早速今年の4月にも援助希望の主催者の募集を開始するという。
海外ではすでにこのユニークべニューを利用した各種イベントが数多く開催されており、フランス・パリのルーブル美術館やイギリス・ロンドンの自然史博物館などが特に有名だ。アジアでは中国の万里の長城が代表的な例として挙げられる。
訪日外国人を呼び込み、イベントの開催そのもの以上の副産物を期待できるユニークべニューの活用であるが、活用の前に解決しなければならない問題も同時にある。
日本では人が集まる場所に、それぞれの用途と特性が考慮された上で設定された施設の基準がある。例えば、消防や食品衛生関連などの規定がこれに該当するが、そうした規定がユニークべニューとしての活用の弊害になることがある。日本の厳しい安全・衛生基準が、逆にあだになるパターンだ。このままでは規定を満たさないゆえにユニークべニューとしての活用が見送られる施設も出てくる。
ユニークべニューの活用を進めるならば、こうした規定の緩和と改正が必要となってくるが、イベントは多くの人が集まるため、防災・防犯・衛生の基準には一定のレベルを要求しなければならないことも確かだ。
政府は今後、日本が誇る高い安全意識の世界的評価を崩すことなく、いかに新しい規定を設けられるかが課題になるだろう。(編集担当:久保田雄城)